1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

水平対向+シンメトリカルAWDをアイデンティティーとして取り戻すスバル

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月10日 8時48分

●CNFがすべてを解決する

 そうなると、ここまで議論してきた前提が大きく変わる。まずCAFE規制は、燃料を変えることで即時問題が解決する。もちろんCNFの生産量とコストの問題は当分あるだろうから、2050年までは化石燃料とCNFの混合燃料を使うことになるだろう。年次を追うごとにCNF比率を増やし2050年に100%にすれば良い。

 例えば1980年代のクルマの燃費を思い出すと、リッター10キロ走ればまあまあ燃費の良いクルマだった。当時のガソリン価格がリッター150円だったとして、燃費が倍のリッター20キロになれば、1キロ当たり走行単価で見るとリッター300円で同等だ。ハイブリッドを使うことでコスト上昇を抑えられるのである。

 何よりも、気候変動問題が提起されて以降、CO2を排出することは悪だった。自動車メーカーとしては世界が決めたモラルを無視できない。BEVが売れてくれれば良いのだが、思うように売れない中で、規制が厳しくのしかかる。そういう現状を大きく変えてくれるのがCNFである。

 いままでモラルの問題として厳しい状態にあった燃費が、単なるユーザーコストの問題に回帰する。ユーザーさえ納得すれば燃費が悪いクルマでも成立するのがCNFの時代である。

 逆に言えばユーザーが「このエンジンにほれ込んだから燃費のコスト差は気にしない」ということが言えるようになったのである。

●水平対向エンジンとシンメトリカルAWD

 いや別に水平対向の燃費が悪いということを言っているわけではない。この議論で問題にしたいのはむしろ、ここしばらく選択肢がなく諦めてきたエンジンのツヤである。不思議なことに燃焼効率をとことん高めていくと、どんどんエンジンのツヤがなくなりフィールが悪くなる。それでも化石燃料を使っている間はCO2を減らすという最重要課題を前に文句を言える状態ではなかった。

 それが変わる。そこで藤貫CTOは決断した。水平対向を残そう。水平対向は熱効率が悪い。それはもう機械の素養としてどうしようもない。機械効率の合理性からいえばそういう話でしかない。しかしながら独特の回転フィールや振動の少なさなど、エンジンとして個性がある。CNFの時代にはもう一度そういう価値を訴求できるようになったのだ。

 こうしてスバルは、長い逡巡の後に、水平対向エンジンとシンメトリカルAWDをスバルのアイデンティティーとして大切にしていくことを決めたのである。

 今後ZEV規制のルールがCNFをどう扱うのかはまだ分からない。仮にZEV規制が認めるゼロエミッションビークルがBEVだけに限られたままだとすれば、スバルは多くのBEVを売らなければならなくなるが、同時に水平対向のHEVも増えていく。スバルはようやく具体的な未来を指し示したのである。

(池田直渡)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください