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オフィスに響く怒号──「経営危機のブラックIT企業」が「残業月15時間のホワイト企業」化した改革の中身

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月1日 6時30分

 「全員参加型経営」は、同社が創業時から掲げている指針の1つだ。それまでは「全員が経営者意識を持つ」といった意味合いで使われることが多かったが、言葉の意味が変化してきていた。

 「『皆ちゃんと稼いでくれ』程度の意味だったものが、より実質的で本来的な意味になってきたのはこの頃だったかと思います」(同氏)

●競争力獲得のために「売り上げの2割の事業」に注力

 プロジェクトXを経て、どうにか黒字化を達成したが、そもそも、なぜこのような苦境に陥ってしまったのか。理由は大きく2つあったと、同氏は見ている。

 1つは、大口クライアントからチームごと社員たちを引き抜かれ、その分の売り上げが見込めなくなってしまったことだ。「僕らのサービスが強かったら、そこからでも回復できたはず」との反省が生まれた。

 もう1つは、レバレッジのきくプラットフォームビジネスへの挑戦を繰り返してきたこと。新規事業に挑戦し、1~2年は好調に進むものの、3~4年経つとうまくいかず、撤退し、減損損失を出す──といったサイクルを繰り返していた。「どちらの要因も、競争力が乏しいことが根本的な原因だった」(同氏)

 では、どうしたら競争力のあるビジネスを作れるのか。競合他社の状況を鑑み、「業界内で強者のポジションを取れるところで勝負しよう」と考えたとき、Web運用事業に注力することに決めた。

 当時の同社の売り上げの内訳は、ネット広告の代理店事業が約43%。Web構築事業が約35%で、残りの21%ほどがWeb運用事業だった(2008年度)。売り上げの2割ほどしかない事業への集中には、反対意見も根強かった。また、戦略の転換を求められた代理店事業やWeb構築事業には、長く残業し“モーレツ”な働き方をする社員が多く、納得できないとして辞職も相次いだ。

 「ネット広告の代理店事業は、すでに強力なプレーヤーが多く、勝つことはできない。Web運用は『つまらなくて、地味で、低付加価値』に見える領域で、あまり競合がいない。そこをクリエイティブで、成果型で、高付加価値にしていくことを目指した」(同氏)

 注力を決めたWeb運用事業で、競合他社に勝てる強みを作らなければならない。そのために、大企業を相手に数十人のチームを組んで運用する体制を整えた。

 「同業他社の多くは大規模ではなく、数人の腕が立つクリエーターが複数の案件を回して成り立たせていた。単純に挑んでも勝てないが、大規模化して差別化した。チームで顧客のマーケティング成果を目標に据え、自ら提案し価値創出していくような企業はまれだった。

 あとは品質向上のため、地道にミスを集計したり、課題管理リストを作ったりして運用スキームをためていった」(同氏)

 事業への手入れと人事制度改革を並行して進めていった同社。数年後にはさらなる働き方改革で、ホワイト化を進めていくことになる。

 2016年に掲げた「残業時間を50%減らしつつ、年収は20%アップ」という目標は、3年間でいずれも目標を上回る形で達成した。また、多くの上場企業が今なお実現できていない「女性管理職比率30%」を早々に成し遂げている。

 掲げた目標を次々に達成できた訳とは? 後編記事「なぜ? 『残業が半減』したのに『年収27%アップ』──元ブラック企業が取った、思い切った施策」で紹介する。

(小林可奈)

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