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リスキリング機能不全? 学び直しても賃金が増えない、当然の理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月18日 7時35分

 事務以外の職種の場合であっても、基本的に状況は変わりません。「その他の情報処理・通信技術者」に分類される職種は平均給与額が37万1600円なので転職できれば給与は上がる可能性が高くなりますが、リスキリングでIT技術やネットワークなどについて学んだとしても、実務経験が問われるケースが多いのは同じです。

(2)社内異動

 2つめのパターンは、リスキリングによって自社内で異動したり新規事業を起ち上げたりして、より賃金の高い新しい仕事に就くルートです。いま一般事務に従事している人が経理を学んでおけば、社内公募制度に手を挙げて承認され、経理部門に空きが出た時に会計事務従事者に配置転換される可能性を高められます。

 日本でいわゆる正社員と呼ばれる雇用形態はメンバーシップ型などと言われるように、就職と表現するよりは就社と表現した方が実態に近く、会社の一員として総合的な能力を評価した上で採用される傾向にあります。転職だと、リスキリングで習得した技能だけを評価して正社員として採用されることはまずありません。

 その代わり、一度採用された後はオールマイティーな対応力が求められ、ジョブローテーションなどを通じて未経験の職種でも部門を横断して就業できる機会を得やすい面があります。そこで新しい職種の実務経験を得た後、他社へ転職するという道も見えてきます。

 一般事務から情報処理・通信技術者のように、全く異質な職種転換の場合であっても同様です。会社が新規事業を起ち上げれば、未経験からでも異質な職種へと転換する機会が生まれやすくなります。

 2024年版の骨太方針に経営者のリスキリングについて触れられているのは、経営の効率化や生産性向上だけでなく、DXやAIなど新しい知識を経営者が学ぶことで新たな取り組みや事業が生まれ、リスキリングした社員が学びを生かせる仕事が創出されることを期待しているのではないかと思います。

(3)いまの職種でのグレードアップ

 3つめのパターンは、いまの職種でのグレードアップです。例えば一般事務のままでも、WordやExcelのスキルを磨いて昇進すれば賃金は上がります。その結果、エンプロイアビリティ(employability:雇用される能力)が向上し、より賃金の高い会社に転職できれば賃上げと労働移動が実現されます。

 ただ、政府が掲げている三位一体改革は、成長分野への労働移動の円滑化をうたっており、その点を踏まえると、リスキリングを推奨する目的として最も強くイメージされているのは、転職を通じて新しい仕事へと移る1つめのパターンのようです。

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