「KADOKAWA VS. NewsPicks」騒動に 犯人と交渉中の暴露報道は“正しい”ことなのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月26日 5時40分
KADOKAWAも被害、どうなる?
今、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃を巡って、セキュリティ関係者の間で物議が起こっている。
問題になっているのは、6月8日にランサムウェア攻撃を受けたニコニコ動画だ。ドワンゴが運営するニコニコ動画が停止してしまい、親会社のKADOKAWAにも影響は及んでいる。ニコニコ動画がサイバー攻撃から復旧するには、少なくとも7月末までかかると発表されている。
この事件を受けて6月22日、オンラインメディアのNewsPicksが「【極秘文書】ハッカーが要求する『身代金』の全容」とする記事を掲載。ランサムウェアの攻撃側と行っている交渉の内容を詳細に暴露したことで、ドワンゴ側から猛反発が起きている。
ここでは記事の詳細は書かないが、KADOKAWAとドワンゴの夏野剛社長は「このような記事をこのタイミングで出すことは、犯罪者を利するような、かつ今後の社会全体へのサイバー攻撃を助長させかねない行為です。Newspicksに強く抗議をするとともに、損害賠償を含めた法的措置の検討を進めてまいります。なお、本記事についてコメントすることはございません」とコメントしている。
これがセキュリティ界隈(かいわい)、そしてメディアでも議論を生んでいるのである。記事を掲載したメディア側と、サイバー攻撃被害企業のどちらの言い分が“正しい”のだろうか、と。本稿では、この問題についてサイバーセキュリティを取材してさまざまなメディアで伝えてきた筆者の経験も踏まえて考察してみたい。
●「公益性」があるのはどんなケースか
まず筆者の現時点(6月25日)での結論を先に言うと、今回はNewsPicksが少し先走りしたように思う。
NewsPicksが早い段階で、ドワンゴ内部のリーク情報を詳しく取材できたことには賛辞を贈りたい。情報をどこよりも早くつかんで伝えることこそメディアの正義だと言えるからだ。
ただ記事掲載の判断は、また別の側面を考慮しなければいけなくなる。筆者としては、NewsPicks側の記事掲載が正しかったとすれば、それは公益性という点が重要になると考える。メディア側の表現の自由が保障されるには、公益性が重要な要素の一つだからだ。
筆者は自身のYouTubeチャンネルでも今回のサイバー攻撃についての話をしているが、ニコニコ動画というメディアは通信やコミュニケーションのインフラの一部にもなっている。国会中継や記者会見などもニコニコで視聴する人が少なくないし、ニュースなどを見ている人も多いからだ。
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