自動車の誕生とT型フォード 自動車と経済発展の歴史を振り返る
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月16日 6時40分
世界の経済発展と自動車との関係
記事のネタというのは、ついつい最新ニュースの解説に終始しがちなので、たまには視点を切り替えて、歴史的観点から世界の経済発展が自動車とどう関係してきたのかという話を温故知新のスタンスで振り返ってみようと思う。自動車産業は20世紀以降、世界の経済覇権と密接な関係を築いてきたわけだが、その流れは誰もが分かっているようで、実は少々漠然としているからだ。
世界最初の自動車は、一般的には1886年にドイツのカール・ベンツが特許を取得したベンツ・パテント・モートル・ヴァーゲンだということになっている。
ただしそもそも何をもって自動車とするかの定義が諸説あり、1771年にフランスのジョゼフ・キュニョーが発明した蒸気機関の砲車とする説や、ベンツとほぼ同時の1886年にゴットリープ・ダイムラーが馬車にガソリンエンジンを搭載したMotorkutscheだとする説もある。4つのタイヤとガソリンエンジンという意味では、確かに自動車の先祖とするにふさわしいところもある。ちなみにkutscheとは英語のコーチで、要するに馬車。どうもサスペンション付きの馬車を指すらしいが、時代や国によって少々意味が変わるので、あくまでもざっくりした話だと思ってほしい。
もうひとつ、「いやいや、世界初は1884年にドラマール・ドブットヴィルが助手のレオン・マランダンと製作して走らせたものが最初だ」という説もある。というかフランス勢はずっとこの説を主張している。
まあそんなわけで説はいろいろあるのだが、ワンオフではなく、製品として販売され、かつ公的な特許を取得して記録が明確という意味では、ベンツに軍配が上がる。なのでとりあえず「世界初はベンツ」が多数派になっているわけだ。ということで自動車と経済というテーマに関しては、この最初の欧州の時代は、単なる前史であり、本来の話はこれからだ。
●T型フォードの革命:自動車産業と経済発展の起点
さてさて、このように19世紀末に自動動力を採用した発明品として登場した自動車は、20世紀初頭にかけて、貴族のおもちゃとして流行していく。メーカーのおおよその創業順に挙げていくと、ベンツとダイムラーから始まり、プジョー、ド・ディオン、パナール、フォード、ルノーと続く。20世紀に入ると、ロールス・ロイス、イソッタ・フラスキーニなどが登場する。
おおよそというのは、このあたりは全て手作り品なのでクルマができた時期、それを販売した時期、法人化した時期などが錯綜(さくそう)していて、その3つ全てが明らかなケースも少なく、はっきりこの順番とは多分誰も言えないからだ。
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