「水をくれ!」 株主総会で“モンスター株主”はなぜ現れる? 上場企業が覚悟すべき「投資単位引き下げ」のリスク
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月19日 9時40分
実際バークシャー・ハサウェイのクラスA株は一株当たりの価格が非常に高いため、一般の個人投資家には手が届かない。しかしバフェットはこれを問題視していない。彼は「高い株価は、真の価値を理解し、長期的に保有し続ける意思のある投資家を引きつけるためのフィルターとなる」と考えている。
ちなみに、バークシャー・ハサウェイのクラスB株(議決権はクラスA株の1万分の1)についてはより低価格で取引されるため、一般の個人投資家にも購入しやすくなっている。クラスB株は過去に50対1の株式分割を行っており、これにより多くの個人投資家がバークシャー・ハサウェイの株式にアクセスできるようになった。バフェットは「クラスB株は、より多くの人々にバークシャー・ハサウェイに投資する機会を提供するためのものであり、それはクラスA株とは異なる目的を持っている」と説明している。
ここまでを前提としてご理解いただいた上で、次項で日本企業に目を移したい。
●日本でも”モンスター株主”が出現
冒頭に書いた通り、日本企業においても「モンスター株主」が現れてきた。企業の株式総会において、本質とは異なる要求を行う株主のことである。株式分割により株価が下がり、投資のハードルが低くなることで、バフェットが指摘した通り株主の質も下がり、総会における質疑応答のレベルが低下しているのだ。
上場企業は「株主1人を管理するコスト」についても目を向けるべきだ。このコストは株主サービスにおけるアウトソーシングの有無、株主数、企業の規模によっても異なるが、一般的には年間5000円から1万円程度かかるとされている。内訳には株主通信の郵送、総会の開催、配当金の振込手数料管理、法令順守のための書類作成などが含まれる。従って株価が安く、株主数が多いほどコスト負担は大きい。
近年では1株から投資ができるサービスも登場しており、そのような投資家も議決権や配当金を受ける権限がある。例えばNTT株は1株159円だが、1株の株主はNTT側が負担する振り込み手数料だけで“赤字”になるわけだ。
このように、安易な投資単位の引き下げは管理コストの増加や経営の効率低下、株価の不安定化といった複合的な要因で企業の業績に悪影響を及ぼす可能性があるといえよう。
●東証や政府は安易な投資単位の引き下げ要請をやめるべき
近年増加している株式分割の動きの背景には、「貯蓄から投資」の文脈で東証や政府が推進してきたものでもある。しかし、株式分割には流動性の向上や投資家層の拡大といったメリットがある一方で、管理コストの増大や短期的な市場反応、そしてモンスター株主の出現といったデメリットも存在する。
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