人材不足でも、引きとめは「必ずしも正解ではない」──人事・上司に知ってほしい6つのこと
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月27日 7時25分
図表1:キャリア自律を進めるサイクル(リクルートマネジメントソリューションズ作成)
少子高齢化などによる人材不足や採用難がますます明確になってきました。こうした状況下で今、多くの企業が「リテンション」(優秀人材の流出防止)に力を入れています。
優秀な人材が組織を離れてしまう痛手を思えば、人事や上司の立場からは引きとめたくなる気持ちも理解できます。しかし、安易な引きとめはむしろ悲劇を生むケースもあります。
そうなる前に把握したい、リテンションに関するポイントを全6回の連載でお送りします。第1回は、リテンションを行う前に、企業が知っておくべきことです。
●(1)リテンションが常にプラスとは限らない
まず考えなければならないのは、個人、会社、そして社会にとって、ベストな状態とはどのようなものかということです。一人一人が仕事そのものを面白く感じ、自分の仕事に意味を見いだせている、あるいは一人一人が自分に向いている仕事をしていれば、個人、会社、そして社会にとって、良い状態であると言えます。
短期間やってみた仕事に不満を持ち、仕事への理解を十分に深める機会があまりないまま本人が会社を辞めたいと思っている場合、リテンションは有効かもしれません。仕事の理解などを通じて、続けたい意欲が高まる余地はまだあるからです。
しかし、本人が向いていないと感じる仕事に長期間就いてみた結果、やはり他の可能を探してみたい考えるようであれば、むやみにリテンションすることは個人にとっても、会社にとっても、社会にとっても好ましくありません。
社内にこのタイプの社員が多くいると、パフォーマンスや士気などさまざまな面で、組織にも悪影響を及ぼすはずです。そうした社員が転職するのは、決して悪とはいえません。つまり、会社が積極的にリテンションすべきではないケースもあるわけです。
また、企業が「優秀人材の囲い込み」をしているケースもよく見られます。実は、数多く採用した優秀人材を活用しきれていない会社は少なくありません。これも個人・会社・社会のいずれの立場にとっても不幸なことです。
もちろん、会社や人事としては、育成コストをかけた社員が流出するのは短期的には痛手でしょう。しかし長期的には、引きとめが成功したとしても向いていない仕事をする社員を増やすことにつながり、マイナス影響が強くなるはずです。宝の持ち腐れになるくらいなら、社外で活躍してもらったほうがよいケースもあります。その人材の可能性を自社で開花させられないと判断したら、転職を無理に止めない方がよいかもしれません。
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