Amazonファーマシーは日本の薬局を駆逐できないであろう、これだけの理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月9日 6時10分
日本には非常に多くの薬局が存在し、その数は年々増加している。厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、日本全国の薬局数は2023年3月末時点で6万2375カ所に達している。これは日本にあるコンビニエンスストア、約5万6000店舗よりも多い。
また、利益が見込める都心部に多数店舗が存在するコンビニと違い、薬局は地方の病院の近辺にも点在し、分布の度合いは薬局の方に分があると考えられる。
さらに、日本の薬局では薬剤の種類によっては、薬剤師による対面での注意事項の説明やカウンセリングも提供している。対面でのコミュニケーションは、患者の様子の細かな違いといった定性的なフォローも行いやすい。これは、特に高齢者や慢性疾患を抱える患者にとって重要な価値であり、オンライン薬局が提供する利便性だけでは代替しえない部分だろう。
日本の薬局は地域に根ざしたサービスを提供しており、特に地方都市では特定の薬剤師や従業員が患者個人と緊密な信頼関係を築いているケースもある。オンライン薬局だけではその辺りの代替も難しい。
薬剤の入手方法についても、Amazonファーマシーの自宅配送は強みとは言い切れない。もし、私たちがセブン-イレブンのスイーツが食べたい時に、わざわざAmazonの通販を利用するだろうか? 近くのセブン-イレブンに足を運んだほうが早いだろう。
そう考えると、消費者が薬を入手するうえで、コンビニよりも数が多い薬局にあえて行かずに、Amazonファーマシーの自宅配送を選ぶだろうかという疑問が残る。
●実は米国でもあまりうまくいってない?
お膝元である米国でのAmazonファーマシーの試みは実際、多くの課題に直面した。既存の薬局チェーンとの競争や法規制により、期待された成果を上げることができないこともあった。また、他国でも同様の問題に直面し、進出が頓挫するケースが見られた。これらの失敗から学ぶべき教訓は多く、日本市場でも同様の問題が発生する可能性が高いのではないか。
例えば、米国では大手薬局チェーンが強固な市場シェアを持っており、Amazonが市場に参入するためには、既存のプレーヤーと競争する必要があった。また、規制の厳しさから、オンライン薬局としての完全な機能を提供することが難しく、サービスの魅力が限定的であった。このような背景から、Amazonは米国市場での成功を完全に収めることができなかったのだ。
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