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なぜ、スシローは「デジタル」な寿司を回すのか くら寿司はエンタメ性の高い店舗にこだわり 戦略の違いを考察する

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月24日 6時15分

 近年ではインバウンド向けの施策も目立つ。東京の浅草や原宿、大阪・道頓堀などで展開する「グローバル旗艦店」は通常店と異なり、白木を使った和の内装が特徴だ。観光と食事を同時に体験できる「サイトイーティング」を標ぼうし、日本文化の発信拠点と位置付けている。4月にオープンした銀座店では、団子や天ぷらの屋台を設置し、縁日の夜を演出するなど工夫している。くら寿司によると、グローバル旗艦店のインバウンド比率はおよそ5割だという。

 対するスシローは、くら寿司ほどエンタメ性を訴求していない印象だ。子ども受けを狙ったとみられる揚げ物やデザートのサイドメニューもくら寿司と比較して少なく、一方で純粋に握りを楽しみたい客層を狙った商品構成である。「サーモン・いか」のように1皿で2貫楽しめる商品や、「いか梅しそにぎり」「漬けごま活〆真鯛」のようにやや凝ったような商品が目立つ。

 握りは皿ごとに価格が3段階へと分かれており、最も高い黒皿は260~290円だ。ほとんどの握りを200円以下に抑えているくら寿司よりも高付加価値品が多い。価格が品質に反映されているのか、アンケートやSNSでもスシローの寿司ネタを評価する意見が多い。

 ちなみにスシローは養殖魚の比率を現在の35%から将来的に50%へと高める計画を立てており、2022年には養殖事業を手掛ける拓洋と共同で、養殖子会社のマリンバースを設立した。日本の漁獲量が年々減少していく中、市場外流通で調達できる養殖魚で仕入れの安定化を狙う。

●縮小する国内から、海外での店舗増へ

 くら寿司は国内で約550店舗、スシローは約650店舗を展開しているが、国内店舗数は既に頭打ちとなっている。人口減少を見据え、両者とも海外事業を強化する方針だ。くら寿司は2024年10月期第2四半期時点で米国に59店舗、アジアで58店舗を展開しており、海外店でも日本と同様、アニメとのコラボ企画を実施している。もちろんレーンに商品を流し、国内店と同じくビッくらポン!も健在だ。

 対するスシローは、2024年9月期第3四半期時点で海外に159店舗を展開する。台湾と中国大陸がともに42店舗、香港は29店舗、タイが25店舗と、中華圏への比率が高い。今後は2026年9月期末までに201店舗という目標を立てている、中国大陸を中心に出店する計画だ。海外店の内装は日本と同様で、特にエンタメ性を訴求するような印象は受けない。国内店との違いはリアル回転寿司がある点のみだ。

 一定のエンタメ性を持つくら寿司と、スタンダードな回転寿司店のスシロー。海外事業でも日本と同じ手法で差別化を図ろうとする様子がうかがえ、今後に注目が集まる。

●著者プロフィール:山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。

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