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DIC川村記念美術館は本当に「バブル時代の負の遺産」なのか? 「物言う株主」の是非

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月12日 12時5分

DIC川村記念美術館は本当に「バブル時代の負の遺産」なのか? 「物言う株主」の是非

DIC川村記念美術館(出所:公式Webサイト)

 DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)が2025年1月末をもって休館するというニュースは、同館を知る多くの人々に衝撃を与えた。DIC川村記念美術館は抽象絵画を中心に多数の収蔵品を持ち、長年にわたって文化的貢献を果たしてきた。この動きの背後には、外資系投資ファンドの「オアシス・マネジメント」があるとされる。このファンドは一体何者なのか。

●「物言う株主」

 オアシス・マネジメントは、2002年に香港に設立された国際的な投資ファンドだ。創設者であり最高投資責任者(CIO)であるセス・フィッシャーが率いている。このファンドはアジアを中心に活動するアクティビスト、つまり企業に対してより高い収益性と株主価値向上を求める「物言う投資家」として知られている。

 日本において、オアシス・マネジメントは多くの企業に対して積極的な経営改革を要求してきた。2022年には富士通の経営陣に対して企業統治の改善を求め、最終的に取締役会の改組を促した。また2024年には花王の株式を取得し、株価を2倍にすることを目指す提案をしたことで話題となった。

●休館への関係

 オアシス・マネジメントは3月、DICの株式の保有割合を6.9%から8.56%に高めた。従って同社の経営方針への発言力も高まっているといえる。こうした背景からオアシス・マネジメントはDIC川村記念美術館の収益性の低さや運営コストの高さを問題視し、リソースをより効率的に活用し、株主への利益を最大化するよう求めたのではという見方もある。

 DIC川村記念美術館は休館後、そのまま閉館するか、東京に移転する方針だという。もし閉館となった場合のインパクトは計り知れないが、上場企業が美術館を営むのは本当に“無駄”なのだろうか。

●企業が美術館を経営する意義

 企業が美術館を運営することは文化的貢献のみならず、地域振興、観光振興としての役割も果たしている。その意義は大きい。

 一方で株主が美術館運営を「売り上げに直結しない施策」だとして、やめるよう要求することは、一概に悪と断ずることもできない。

 株主の視点から見れば、企業に対してリソースを効率的に使い、利益の最大化を求めるのは当然だ。そのため、利益向上に直接寄与しない事業に資金を投じることは、短期的には無駄と見なされる可能性がある。

 特に経済が不安定な時期や、企業の業績が悪化している場合、こうした支出を削減することで、企業の財務状態を改善し、株主価値を守ることにつながるのは事実だ。

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