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名刺の裏に金額を書いて「せーの」で出してきた クルマ買い取りの“入札制度”が面白い

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月20日 6時20分

 このように複数業者による同時査定を行う場合、誰か1人が仕切り役となって価格交渉の流れを説明し、オーナーに了承してもらう流れになる。というのも「後から別の業者が来るので契約は後で」ということになると、とりあえずの価格提示しかできないが、その場で契約することを約束してもらえば上司に掛け合って限界の価格を提示できるからだ。

 いくつもの業者が一番早い時間にこぞってやってきたのは、そうした契約競争に参加するためだった。じっくりとクルマのコンディションをチェックした担当者たちは、それぞれ上司と相談して金額を決めたようだ。

 そうやって買い取り金額を決定した担当者は自分の名刺の裏に金額を記入。それを同時にオーナーに提示する一発勝負の入札である。買い取り業者の担当者たちは、毎日こんな勝負を繰り返しているらしい。

 「実は午前中にも別のところで買い取り査定を行ったんですけど、わずか400円余りの金額差で負けました」と1人の担当者が打ち明ける。数十万円の買い取り価格で数百円差は、かなりシビアな競りとなったことが分かる。買い取り業者でも車種やカテゴリーによって強みのある部分が違うので、毎回同じ業者が競り勝つわけではないようだ。

 一発勝負の結果、軽バンには9万2000円もの値段が付いた。宅配業など物流業界では人気の車両だけに、いくら走っていてもクルマとして機能すれば値段は付くそうだ。

●「クルマは資産」という考えはそろそろ終了か

 2時間後にはもう1社(実は最初に予約した業者)が出張査定に来る予定だった。来てもらって事情を説明して買い取り査定をしてもらうことも可能だが、ほんのわずかな価格差で先の契約をキャンセルするわけにもいかないので、電話で事情を話し、出張査定をキャンセルした。

 こうした日常を繰り返し、買い取り業者は中古車を仕入れている。出張査定ではなく、画像を送ってネット査定をしてもらうこともできる。インターネットで効率よく買い取りができる半面、ライバルも多く薄利多売となっているわけだ。

 カーシェアやサブスク、残価設定など、従来にはなかったクルマの利用や購入方法が用意されることで「クルマを所有する」という考えは薄らぎつつある。クルマを売ってカーシェアなどに切り替える動きが増えれば、一時的には中古車市場は膨れ上がる。

 ビッグモーターの数々の不正で中古車販売の信用は地に落ちた感があるが、それでも中古車市場が機能しなければ新車も販売できない。中古車市場が健全で元気であることは、新車を販売する環境づくりにも役立っているのだ。

 そもそも中古車の買い取りと販売は、ギャンブル性もあるものの、クルマの知識を持っている人にとっては、うまみと面白みのある取り引きだ。エコカーやSUV全盛の今、ちょっと古めのクルマの人気が再燃している。まだしばらく、日本の中古車市場はにぎわいを保てそうだ。

(高根英幸)

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