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「完成マンション取り壊し騒動」 心配なのは積水ハウスではなく、国立市といえるワケ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月21日 6時15分

「完成マンション取り壊し騒動」 心配なのは積水ハウスではなく、国立市といえるワケ

JR国立駅前の国立駅旧駅舎

 東京都国立市で、6月に完成していたにもかかわらず、解体が決定した新築の分譲マンション「グランドメゾン国立富士見通り」の取り壊しが始まっている。事業者の積水ハウスによれば、地域住民を訪問して説明を行い、既に7月16日から解体工事に入ったとのことだ。

 今のところ、解体工事に伴う騒音・振動・粉じんなどの苦情は聞こえてこない。地域の生活環境保全に十分に配慮して、慎重に工事を進めていると見られる。入居予定者にも十分な補償を行ったとのこと。

 同マンションのエリアは、建物の高さが規制された区域ではなく、法令違反はない。建築に構造上の問題があったとも聞かない。一部入居も決まっていた新築マンションが、急転直下、解体が決まる事態は前代未聞といえるだろう。それだけに地元の人たちも現実とは信じがたく、唖然(あぜん)としている。

 現地を訪ねて、道の清掃を行っている人や店舗経営者に聞くと「特に強い反対もなかったのに、せっかく造ったマンションをなぜ壊すのか」「最初は反対していたが、話し合いを重ねて合意した。お金持ち(の会社)が考えることはよく分からない」「取り壊しが決まったときに担当者が男泣きしたと聞いた」などと困惑する声が多い。

 一方で、富士見通りから常に富士山が見えるわけではないが、空が澄んだ冬の早朝などには、通りの先にくっきりと見えるのが、住民の自慢であったことから「通りから富士山が見えるから、その景観が守られたのは良かった」という声もあった。当該マンションに対する複雑な心境がうかがえた。

 国立市役所に問い合わせても、「積水ハウスと住民が話し合って、特に問題なくマンションが建設されたと考えていた」と驚きを隠さなかった。前例のない建設したマンションの取り壊し事件は、果たして住宅メーカーの地域の環境に配慮した“美談”として済ませて良いものなのだろうか。,

●昔ながらの商店街で、起爆剤としてマンションはうってつけだったはず

 JR国立駅を降り立つと眼前に見えるのは、当時のものを復元した赤い三角屋根の国立駅旧駅舎と、駅前ロータリーだ。ロータリーには、赤レンガ風で多摩信用金庫の歴史・美術館を併設したビル、さらに1952年に指定された「国立文教地区」の看板が見える。文教地区のため、駅周辺部にはキャバクラ、ガールズバー、パチンコ店の類は存在しない。

 解体中のマンションは、多摩信用金庫ビルの辺りから西南へ延びる、富士見通り沿いにある。駅から7~8分ほど歩いた、通りのちょうど真ん中辺りだ。通り沿いには少しひなびた商店街が続いており、通行人はかなり多い。複数の学校の通学路でもあり、日中は路線バスも頻繁に往来している。

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