書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月1日 8時10分
シヤチハタ印、正しくは「Xスタンパー」
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。一企業の歴史として100年は大きな節目ながら、同社の舟橋正剛社長は「珍しいことではありません」と謙虚に語る。舟橋社長は1997年の入社以来「ハンコ」への危機感をブレずに持ち続け、さまざまな「脱ハンコ」の試みを行っている。
前編の記事では、その代表的な例としてデザインコンペの実施や、そこから生まれたユニークな商品について解説した。後編の今回は、そうしたB2C商品以外で、次の100年を担うべく柱として舟橋社長が期待を寄せるものについて、話を聞いた。
●30年も赤字続きだったサービスが、コロナ禍で花開いた
前編で触れたB2C商品と合わせて、舟橋社長が力を入れていると話すのが産業領域だ。具体的には、皮革や木材、金属にプラスチックといった特殊な素材に対しても印をつけられる工業用インキが挙げられる。製造現場で油がついた機器に作業終了の印を付ける、ロット番号を付ける、といった用途で活用が進んでいるという。
「当社はハンコ用のゴムを練る、インキを作る、さらに金型の成形など、素材を実際に触って試して、組み合わせながら最終的に商品としてお客さまにご提供するビジネスモデルです。そう考えると、商品はハンコである必要は全くありません。中でも工業用インキは使用頻度が少なく受注ロットが小さいことから請け負えるメーカーがあまりないようで『シヤチハタさん、できない?』と相談を多く受けています」
●時代が早すぎた「電子印鑑」システム
2020年に提供を始めた「Shachihata Cloud」(シヤチハタクラウド)にも期待を寄せる。シヤチハタの電子決裁の歴史は古く、実は開発をスタートしたのは1994年。翌年には電子印鑑システム「パソコン決裁」を発売している。当時は「Windows 95」が発売した頃で、まだ今のように1人1台PCを持つ時代ではなかった。しかし「紙でやっていることは必ずデジタルに置き換わる。そのとき、もっと便利に当社の印影を使ってほしい」(舟橋社長)という思いで開発をスタートしたという。
ただ、時代がまだ早すぎたのか、売り上げは低空飛行が続いた。舟橋社長によると、売り上げは1億~2億円程度の横ばいで、30年にわたり赤字が続いていたという。そんな中でも新たなOSやデバイスが出れば対応するためのアップデートを行い、クラウド化やサブスクリプションへの対応も地道に行っていった。売り上げがやっと上向きだしたのは、皮肉にも「脱ハンコ」が叫ばれる大きなきっかけとなったコロナ禍だった。
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