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なぜ「ジョブ型雇用」は機能しないのか? その“弱点”

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月30日 7時30分

 実はジョブ型の弱点である「人と人のつながり」という特徴を大切にしていたのが、これまでの日本企業の雇用慣行である「メンバーシップ型」です。メンバーシップとは共同体という意味で、まず入社した人はその企業=共同体の一員として迎え入れられます。どういう仕事をするかは後で決まります。仲間としてのつながりは強く、愛社精神を持っています。

 このメンバーシップ型と終身雇用、年功序列などの制度が結びつき、高度成長期の日本企業の躍進を支えるひとつの土台となっていました。

 そういう意味で、ジョブ型の弱点である「人と人のつながり」を補完するためには、ジョブ型とメンバーシップ型を“ハイブリッド”することが効果的だと筆者は考えています。

●令和モデルの「メンバーシップ2.0型」とは

 とはいえ、これまでのメンバーシップ型にはさまざまな問題があり、いわゆるザ・メンバーシップ型のスタイルをそのまま復活させればいいというわけではありません。

 最近、昭和の風土・体質が何かと話題になっています。「不適切にもほどがある!」というドラマのヒットも記憶に新しいですが、これまでのメンバーシップ型はいわゆる昭和型です。これを令和の時代にフィットするように進化させていかなければなりません。

 それでは、令和のメンバーシップ2.0型とは一体、どのようなものなのでしょうか。昭和型との違いという観点から解説します。

【信頼関係・つながり】

・昭和型:同質の安心感(同じ釜の飯を食った仲間)

・令和型:多様性を認め合い、尊重し合う

【個人と組織とのつながり】

・昭和型:個人は組織に従属・埋没。愛社精神を持つ

・令和型:個人と組織が対等な関係(パートナー)。エンゲージメントで結びつく

【他のメンバーとの関係】

・昭和型:強い序列意識と同調圧力

・令和型:パーパスやビジョンを一緒に追求する仲間。フラットな関係

【個性の尊重と個人の自立】

・昭和型:没個性。会社へのキャリア依存

・令和型:自立した個人。個性を伸ばす。キャリア自己選択

 このように「つながり」を大切にするメンバーシップ型と言っても、昭和型(1.0)と令和型(2.0)ではその内容が大きく違います。ジョブ型導入などで職場の人間関係が希薄になってきたという問題意識を感じた時に、上司側から往々にしてやってしまうのが「じゃあ飲みに行くか」など、昭和型でつながりを作ろうとしてしまうことです。

 もちろん昭和型の全てが悪いわけではないのですが、残念ながら昭和型が通用する人は世代が下がるにつれ少なくなっており、これからは根本的な問題解決には至らないでしょう。

 まとめると、最近の流行のジョブ型のデメリットを補完するためには、メンバーシップ型の文化との“ハイブリッド”が効果的であること。またそのメンバーシップ型は、昭和型ではなく、令和型のメンバーシップ2.0型であることが求められるのです。

【令和のメンバーシップ2.0型のキーワード】

 多様性の尊重、個人と組織の対等な関係、エンゲージメント、パーパス・ビジョン、フラットな関係、個性、キャリアと人生の自己選択

●著者プロフィール:塩見康史(しおみ・やすし)

 株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー。

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