希望退職の“キラキラネーム化”──黒字なのに人員整理に向かう企業の「ある事情」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月7日 9時20分
キラキラネームの希望退職募集は、「悪いことをしているわけではない」という、企業側の信念の表れでしょう。
●なぜ黒字なのに希望退職を募集するのか
もう一つの特徴は、黒字企業によるものが多いことです。東京商工リサーチの調査によると、募集人数の78%が黒字企業によるものです(図2参照)。
経営戦略には大きく分けて「全社戦略」と「事業戦略」があります。全社戦略は企業が存続していくための戦略です。
どんな産業も永遠に盤石ではありえません。1989年には日本の銀行は、世界の株式時価総額(発行済み株式数×株価)トップ10のうち5社を占める花形産業でした。しかし今では銀行は、世界はおろか日本国内ですら、トップ10には三菱UFJフィナンシャルグループが入るのみです(2024年9月26日時点)。
栄枯盛衰が常である世の中で、企業を残してゆくための戦略が全社戦略です。ブラザー工業がミシンからプリンタ複合機などの情報通信機器へと中核事業を転換させたことや、シャープがホンハイの傘下に入ったことなどがその例です。
一方で事業戦略とは、個別の事業が他社と競争するための戦略です。ユニクロが商品の企画から製造、販売まで一貫して行う「SPAモデル」や、トヨタの「ジャストインタイム」などがその例です。
現在、多くの企業が市場の縮小に悩み、会社存続のための戦略が必要となっています。その中で、求められているのがDXです。中核事業をDXし、そのための人材は外部から調達する。もしくは特定の職種に投資し、社員に必要なスキルを身に付けさせる。その結果、不要となる既存職種の人員を減らすという動きが希望退職ラッシュにつながっていると考えられます。
事業を大幅に変革するのは、赤字に転落してからでは無理です。そのため黒字企業による希望退職募集が増えています。
DXと相性のいい業種は、ある程度限られています。その例が、電機・機械や情報・通信業です。図3をみれば分かる通り、2024年に早期・希望退職を募集した企業の半分近くをこれらの業種が占めています。このことからも、背景には中核事業の転換があると思われます。
●「社長が一番先に辞めろ」の誤解
どこかの会社が希望退職を募集するというニュースが流れると、ネット上には「社長が真っ先に辞めろ」というコメントが殺到しがちです。この主張は必ずしも正論とはいえません。
まず、常に定年までの雇用責任を求めることは、企業に対する一種の買いかぶりです。株式会社は本来、多数の株主の間でリスクを分担することによって、リスクが高い事業に挑むための方便にすぎません。働く人を雇うことは利益を得るための手段に過ぎず、目的ではありません。
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