あずきバー「井村屋」が挑むDX 現場の抵抗があっても、意外とSaaS移行できたワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月11日 7時0分
この旧来のシステムを刷新するため、同社が選んだのがラクスのクラウド型経費精算システム「楽楽精算」だ。「今では、スマートフォンで領収書を撮影し、データをアップロードするだけです。承認もオンラインで行われます」と岡田氏は説明する。導入の結果、処理時間の大幅な短縮とペーパーレス化を実現。さらに、現金の取り扱いも最小限に抑えられるようになった。
次に、ファイルサーバのクラウド化にも着手した。
「以前はオンプレミスのファイルサーバを使用していましたが、クラウドストレージの『Box』に移行しました」。この移行により、場所を選ばずにファイルにアクセスできるようになり、テレワークの実施にも大きく貢献した。さらに「東南海地震などの災害リスクに備え、重要なデータをクラウド上に保管することで、事業継続性の向上にもつながりました」と、副次的な効果も強調する。
そして、これらの取り組みを補完するのが、JCBと提携した法人カードの導入だ。「完全なキャッシュレス化を目指し、JCBと提携して年会費無料のビジネスカードを導入しました」
この法人カードは、経費の立て替えや、新幹線のEXカードとの連携にも活用されている。出張時の利便性が大幅に向上したという。
これらのSaaS導入と業務改革は、井村屋グループの働き方を根本から変えた。「紙の文化」から脱却し、デジタルを前提とした効率的な業務プロセスへの移行が着実に進んでいる。しかし、こうした大規模な変革には必ず課題がつきものだ。社内の抵抗をどのように克服したのだろうか。
●DX戦略の特別部隊
井村屋グループがDX推進で直面した課題を乗り越えられた秘訣は、現場を巻き込んだ大規模なプロジェクト体制にあった。
DX戦略プロジェクトには、約40人のメンバーが参加している。この規模は、同社の従業員数からすると決して小さくない。「生産現場、営業部隊、管理部門など、各部署から人が集まっています」
プロジェクトの特徴は、その多様性と階層横断的な構成だ。「当初は管理職が中心でしたが、今は実務担当者レベルの人も多く参加してもらっています」。このアプローチにより、現場の生の声をDX戦略に反映させことが可能になった。ここで出された意見は、具体的なSaaS選定や導入計画に反映される。「現場の声を聞くことで、導入後の抵抗を最小限に抑えることができました」
しかし、全ての変革がスムーズだったわけではない。「特に、長年続いてきた業務慣行を変えるのは難しかった」と岡田氏は率直に語る。例えば、経費精算のキャッシュレス化に対しては、「仮払金がなくなると困る」「個人の立替精算に抵抗がある」といった声が上がった。
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