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崩れ始める、新卒一括採用 なぜ綻びが生じているのか?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月16日 9時0分

 一般にジョブ型雇用とは、職務に必要なスキルや資格など定義した職務記述書(ジョブディスクリプション)をベースに採用し、雇用契約を結ぶ。給与も担当するジョブで決定し、基本的に人事異動や昇進・昇格の概念がない。経験とスキルレベルに応じてポジションが決まり、それに見合った給与を支払う仕組みであるが、特定のジョブ(職務)についても、スキルが向上しなければ給与はそのままであり、給与を上げたければ常にスキルアップが求められる。

 また、企業の事業再編によってジョブが失われるリスクもあり、そうなると社内公募で別の職種に異動し、一から始めるか転職するしかない。

 もちろん、解雇のリスクもあり得る。最高裁が2024年4月26日に下した「職種の限定の合意がある場合、本人の同意なしに配置転換できない」とする判決(滋賀県社会福祉協議会事件)が注目を集めている。

 控訴審の高裁判決では、解雇を回避する目的があれば、職種限定契約があっても配転を命じることができるとしたが、最高裁はそれを覆し、職種の変更が自身の利益になるかどうかは労働者自身が判断するべきだという判断を示した。

 労働法に詳しい弁護士は、最高裁の判決の意味について「労働者の雇用の安定を損なう可能性もある。職務がなくなってしまう場合でも、労働者が同意しない限り他の職務に就かせることができないため、その場合に解雇しても有効と判断される可能性もあるのではないか」と指摘する。

 また「裁判所としては、職種限定合意がある場合は、他の部署で受け入れてもいいが、どうしますかと確認するアクションが必要だと考えていると思われる。本人が行きますと言えば問題にはならないが、今回の判決の事案では本人は行きたくないと言っている。他に行く場所がなければ辞めてもらうしかないという話になるのではないか」と語る。

 つまり、労働者の同意を前提とした職種限定のジョブ型雇用が広がれば最高裁の判決は大きな影響を与える可能性もある。

 別の弁護士は「ジョブ型の国では、新たなジョブをつくり新規事業を推進することがあるし、それがうまくいかなければ事業から撤退し、ジョブごとなくすこともある。そうなればジョブ型の国は解雇が認められているが、日本では解雇回避努力として、別の部署に移りませんかという提案をすることになる。当然、待遇も変わる。新規事業なので年収1500万円で迎え入れた人でも、業務自体がなくなったことで、その会社の平均的賃金の年収700万円の仕事しか提案できないことも想定される。強制的に異動してもらうことができないし、本人の同意が得る必要があるが、本人がその条件に満足せず、同意しなければ会社は解雇するしかない」と語る。

 つまり、ジョブ型採用になれば、職種が限定されない場合に比べて、その仕事を遂行するのが難しいと見なされれば解雇されるリスクが高まる可能性もあるのだ。また、仕事自体がなくなれば、会社も他の部署で働きますかとは提案しにくくなり、辞めざるを得なくなるケースも出てくるかもしれない。

 日本企業が一気にジョブ型雇用に転換することはないにしても、ジョブ型雇用が広がれば新卒採用でも職務に必要なスキルを前提に採用する時代がくるかもしれない。

(溝上憲文、ジャーナリスト)

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