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これが先進国? 東証社員インサイダー疑い、単なる“不祥事”では済まない深刻な理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月17日 8時0分

 現在は懲役の上限が「5年以下」と2年伸び、罰金も「500万円」と200万円増額されている。しかし、一部では現行の罰則でも、国際的に見てペナルティーが軽すぎないかと指摘されている。これが抑止・再発防止効果を損ね、市場の公正性に対する信頼を低下させているのではないかという主張だ。

 ちなみに、上述の経済産業省の幹部職員による2012年のインサイダー事案では、エルピーダメモリに関連する銘柄が取引の対象だった。この元幹部は、政府内部で得た未公開情報を基にして、半導体業界における重要な取引に関する株式を長期にわたり事前に購入したことで訴追された。量刑は懲役1年6カ月で執行猶予が3年、罰金は100万円にとどまり、不正により得た利益に対する追徴金約1000万円で確定した。実刑判決ではなかった。

●インサイダーは利益が出なくても、損をしても逮捕される

 日本の法律では、インサイダー取引は利益を得たかどうかにかかわらず、法に違反する行為とされている。重要なのが、株価が上がると思ってインサイダー取引を行い、結果的に損失を被った場合でも、インサイダー取引に該当すれば違法であることだ。

 金融商品取引法の第166条の規定では、情報を知っている者が、それを利用して株式を売買する行為を禁止している。この条文は「取引の結果」が重要ではなく、「未公開情報を利用して取引を行った」という事実そのものが違法であることを示している。

 加えて、未公開情報の漏洩自体も違法行為とされており、情報を基に取引を行った者だけでなく、その情報を他者に伝えた者も処罰の対象となる。取引しないからといって他人にインサイダー情報を提供したり、恩を売ったり、キックバックを受けたりるような行為も当然ながら禁止というわけだ。

 インサイダー取引は、情報を知っている本人や知人・親族が売買するようなずさんな手口でない限り、発覚しないケースもある。このようなケースでは、インサイダー取引を行うことによるペナルティーが抑止力となるはずだが、懲役と罰金額は国際的に見ても少額であり、十分な効力を発揮していないと考えられる。

●単なる“不祥事ニュース”ではない

 市場の監督者である金融商品取引所や金融庁の立場に属する人間がインサイダー取引を行うというのは、先進国としてはあるまじき事案だ。それが連続して発生していることには非常に強い危機感を持たなければならない。

 例えるならば「宝くじで胴元が当たりくじを抜き取って換金していた」ようなものだ。そうだとしたら、誰が今後宝くじを買うようになるのだろうか。市場監督者のインサイダー取引とは、それほどまでに重大な事案なのである。

 インサイダー取引が横行する市場では、新規投資が減少し、企業の資金調達能力も低下する。具体的には、インサイダー取引が蔓(まん)延すると、一般の投資家はインサイダーによって高くなった株を買わされることになる。

 本来は安く買えたはずの株を高く買わされるのであるから、インサイダー取引が蔓延すれば、「この国の株式市場はインサイダーの分だけ割高になっている」と見なされ、忌避されることになるからだ。

 日本の市場は外国人投資家のシェアが大きく、日本の株式市場における外国人投資家の売買代金比率も6割を超えている。これは外国の資金が日本の企業価値や市場形成に大きな役割を果たしていることを意味する。

 未公開の重要な情報を利用した取引は、金融市場の公平性を損ない、一般投資家に不利益をもたらすため、法律はその行為を厳格に規制する必要がある。

(古田拓也 カンバンクラウドCEO)

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