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なぜ「金の卵」を守れなかったのか 東芝と日立、明暗を分けた企業統治のあり方

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月29日 7時20分

なぜ「金の卵」を守れなかったのか 東芝と日立、明暗を分けた企業統治のあり方

「金の卵」を失ったその理由、東芝の苦境を振り返る

 半導体大手のキオクシアホールディングス(以下キオクシア、東京都港区)が、早ければ2024年10月を目指していた東京証券取引所への上場を遅らせる方針を固めました。キオクシアの旧社名は「東芝メモリ」。債務超過に陥った東芝が、2018年に米投資ファンドのベインキャピタル率いる日米韓連合に売却したものです。

 東芝の半導体事業は、不正会計が発覚した当時、日本で唯一トップクラスの技術力を誇り、その後の日本経済の成長にも大きく寄与しうる「金の卵」でした。私は、それを売却することは理解に苦しみましたし、世間的にも「なぜ売ったのか」という声が上がっていました。

 東芝はどこで道を間違え、そのような重要産業を手放すという決断をしてしまったのか。今回は当時の東芝の財務状況やガバナンスを振り返りつつ、今後日本の企業に求められる経営は何なのか探りたいと思います。

●「ガバナンス優等生」といわれた東芝の経営体制

 東芝はかつて「ガバナンス優等生」と言われていました。なぜなら大手製造業のなかで2003年にいち早く、経営陣の企業運営のチェック強化を目的とした「委員会設置会社(現在の指名委員会等設置会社)」となったためです。

 ただ、監査委員会のトップは元最高財務責任者が務めており、指摘する側も生え抜き。実態としては身内で固められたガバナンス体制であり、日本企業の典型例でした。これは経営者のインタビュー記事でよく見られる「会議室に突然呼ばれ、『次の社長を務めてもらう』と言われた」という、委員会や取締役会ではなく、密室で次期社長が決められていることを意味しています。

 当時、東芝の指名委員会の構成は、会長と社外取締役2名の計3名。そのため、「過半数は社外の人であり、客観的な判断ができる」という状態に見えていました。ただ、2017年に東芝が公表した内部管理体制の改善報告によると、事実上の人事権は会長にあり、指名委員会は機能していなかったと記載されています。

 社長が人事の原案を作成・説明することに加え、後継者計画が明確に規定されていないことや、社外取締役に情報提供もされていなかったことから、人事に関して社外の人が意見できない状態でした。

 本来であれば社内で後継者計画があり、それをきちんと株主に説明したうえで、最終的に株主の投票で決定されるべきですが、それがなされていませんでした。社長が会長になり、会長が名誉顧問になる。日本企業にはそうした習慣が残っていますが、「ガバナンス優等生」と呼ばれていた東芝ですら、そうした状態から脱却できていませんでした。

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