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「解雇規制」また棚上げ? 必要なのは“緩和”ではなく……いま見直すべきポイントとは

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月22日 6時45分

 解雇できないと、能力が不足した社員であっても扶養するかのごとく雇い続けることになります。その結果、他の人材と入れ替えたいはずのポジションが空かないままになります。日本の労働市場が硬直的といわれるのは、そういった背景が影響しています。

 能力不足の社員を雇い続ける会社側も、能力不足だと思われながら雇われ続ける社員側も、どちらも不幸です。

●解雇時の金銭補償、現行は不十分

 「日本は解雇規制が厳しい」という声が挙がる一方で、実際にはたくさんの解雇が起きているのも事実です。

 厚生労働省が公表した「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、総合労働相談コーナーに寄せられた解雇にまつわる問い合わせは年間3万2944件に及びます。それらの中には不当解雇に相当するものがかなり含まれていると考えられます。

 なぜなら、労働契約法16条には解雇について「客観的に合理的で社会通念上相当」であるかどうかという一種の基準が示されているものの、過去の判例などから解雇の合理性が認められるのは簡単ではないからです。

 いわゆる正社員として採用されると、会社は強い人事権で職務や勤務場所などを変更できます。その反面、社員が能力不足であったとしても、持てる能力を生かせるポジションを見つけて異動させ、雇用維持する責任も負います。会社は強い権限を持つ分、相応の責任も負うのです。

 業績不振であっても雇用維持の努力が不十分だと会社は責任を果たしたことにならず、「景気は悪いし、キミは使えないからクビだ!」では合理的で社会通念上相当な解雇と見なされません。解雇が不合理だと判断されるのは、社員があっせんや労働審判、裁判などで会社と争った場合です。

 解雇されて一日でも早く次の仕事を見つけなければならない状況の社員が、就職活動もしながら会社と争ってその不合理を証明しようとするのは大変な労力とストレスがかかるでしょう。そのため多くの場合、泣き寝入りせざるを得ません。

 法制度が定める解雇時の金銭補償といえるのは、労働基準法20条に記されている30日分の手当くらいです。もし争っても、あっせんなどでは解決金が数万円程度で済まされることもあります。「解雇を金銭解決するルールを定めれば、金さえ払えば解雇できてしまうようになる」と批判する声も聞きますが、不当な解雇をするような会社に戻りたい人は、そう多くはありません。

 結局辞めることになるならば、次の仕事を見つけるまでの生活が保障される水準以上の金銭補償などをルール化することで働き手の保護につながる面があります。一銭も受けとらずに解雇されるケースがあることを踏まえると、今は金銭補償が著しく不十分な状態です。

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