設備投資に1486億円 「富士山登山鉄道」構想に推進・反対派が真っ向対立 問題点はここだ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月8日 8時5分
バッテリーはどうしても、それなりの重量になる。最近は総重量を過度に増やすことなく、容易に搭載可能な路面電車を想定したバッテリーも開発されているとはいえ、車両重量の増加は急勾配を上り下りする鉄道にとってマイナス要素にしかならない。
ここで思い出されるのが、100パーミルの急勾配に対応するために強力なモーターを搭載したことから車体重量が増加し、構造物への負荷による危険性の増大などから、開業後1年半で休業に追い込まれた横浜ドリームランドモノレールの事例だ。今回のLRTも大型モーターの搭載が必要となり、車両の制動性能(ブレーキ)や路盤・路床および橋梁への影響なども考慮されなければならない。
こうした技術面に加え、雪崩、落石、火山噴火時の避難計画や自然公園法などの諸法令・規制への対応などクリアすべき課題は多く、実現するにはかなりの時間が必要となるであろう。県は最短でも工事着工まで8年かかるとしている。
●反対派の主張はどのようなものか
では、一方の反対派はどのような主張をしているのか。「富士山登山鉄道構想に反対するフォーラム」に登壇した元・都留文科大学教授の渡辺豊博氏は、「富士山はユネスコからさまざまな問題点・改善点の指摘を受けているが、登山鉄道を建設すれば、それらの問題が解決するかのような県の主張は誤っている」と声を張り上げる。
渡辺氏は「富士山の最大の問題点は管理が一元化されていないことだ。文化庁、環境省、林野庁などによる縦割り行政がそのまま適用されていることが、さまざまな問題を引き起こしている要因」と指摘。環境保護局が一元管理する海外の事例を挙げつつ「富士山を開発すること自体には反対しない。しかし、開発の前提として包括的な管理基本計画(富士山再生アクションプランのようなもの)が必要であり、大きな視野でどのように整備すべきかを検討する必要がある。それがないから県が暴走する」と、一元管理ができていない国の対応のまずさと県の姿勢を批判する。
富士吉田市では、現在、自動運転EVバスの実証実験を進めているが、これを前提に渡辺氏は「オーバーツーリズム対策ということであれば、海外の国立公園と同様、麓にゲートを設けて入山者の総量規制をすればよく、ゲートを通過した人たちはEVバスに乗って五合目へ移動してもらえばいい。登山鉄道など全く必要ない。むしろ、オーバーツーリズムの対策として重要なのは、お客さんを五合目に集中させるのではなく、さまざまな散策コースを設定するなどして分散させ、自然への負荷を軽減する視点だ」と言う。
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