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「たまにはユニクロ以外も着ようかな」←その店もユニクロ系列です 高級ブランドも抱えるファストリの戦略

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月16日 8時0分

 当時のアパレル市場には、明確な階層構造が存在していた。総合スーパーの衣料売り場は「安かろう、悪かろう」の典型である「エコノミー戦略」、ジーンズメイト、ライトオンといったカジュアルウェア専門店は「中価値戦略」、百貨店に入った有名ブランドは「高価値戦略」を展開していた。

●既存市場を破壊したユニクロ

 そんな中ユニクロは、当初「最安値宣言」を掲げ低価格×高品質の「スーパーバリュー戦略」で市場に参入し、衝撃を与えた。

 一般にスーパーバリューのポジションは実現するより継続することが困難であるといわれているのだが、ユニクロも次第に最安値宣言を公言しなくなり、価格は中程度で価値が高い「高価値戦略」へとシフトしていった。

 一方、GU(ジーユー)はユニクロとは異なる戦略を採用した。当初はユニクロの3分の2程度だった価格帯を見直し、全商品の8割をユニクロの半額以下に設定。「990円ジーンズ」を代表とする目玉商品で「グッドバリュー戦略」を確立し、若年層向けのトレンド発信ブランドとして成長している。

 バリューラインで考えれば、先程のセオリーとプラステは両ブランドともに価格と価値を高い水準でバランスを取る「プレミアム戦略」に位置している。このように、同社は巧みに価格戦略ポジションの住み分けを行っている。

●ブランド間のシナジー効果で競争力を高める

 ファーストリテイリングの強みは、異なる市場で展開する4つのブランドを、1つの企業グループとして最大限に活用している点にある。

 各ブランドは独自の市場ポジションを持っており、セオリーは高級路線、プラステは上質なカジュアル、ユニクロは品質重視の中価格帯、GUはトレンド発信型の低価格帯と、それぞれが異なる消費者層にアプローチしている。

 同社の成功は、各ブランドの独自性を保ちながら、全体としては一貫性のある価格戦略を展開している点にある。製品の調達や製造プロセスを共有することで、高品質を維持しながらコストを抑制。各ブランドの強みを生かしつつ、グループとしての競争力を高めているのだ。

 一見すると複雑に見えるこの戦略だが、その本質は明快だ。ブランドごとに価格帯とターゲット層を明確に分け、それぞれの独立性を保ちながら、グループ全体で効率化を追求している。今後もその戦略に注目し、アパレル業界全体の動向を見守りたい。

●著者プロフィール:金森努(かなもり・つとむ)

有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師

金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。

2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。

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