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なぜ、イケアは激安“50円”ソフトクリームを提供するのか?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月18日 7時20分

 また、顧客が家族や友人に紹介することで、新規顧客の来店が期待できる。これにより、新規顧客の獲得と売り上げの拡大を見込むことができる。

●顧客の動きを意識した店舗設計

 イケアの店舗は巨大であるため、顧客は長時間店内に滞在する。これに伴う疲労や空腹感を解消できるフードメニューは、顧客にとってありがたい存在だ。

 イケアは店舗の出入口付近にレストランを設け、買い物を終えた顧客が立ち寄りやすくしており、購買後の満足感と再訪意欲を高めている。

 顧客の動きを意識した店舗設計で、顧客体験を最適化しようとするイケアの姿勢が見て取れる。

食事を通じ「北欧ブランド」の浸透も

 さらに、「北欧らしさ」を体現したフードメニューで、顧客に北欧のライフスタイルを体験する機会を提供している。

 これにより「北欧発」というブランドの一貫性を高めてもいるのだ。

●目玉商品で来店を促し、顧客のデータの収集・活用で顧客理解をさらに深める

 50円のソフトクリームはロスリーダー(目玉商品)としての役割も果たしている。これは利益を度外視した商品を出すことで顧客を引き寄せ、他の商品購入につなげる戦略である。

 価格以上の価値を提供することで、顧客との長期的な関係を築きやすくし、売り上げ増加に加え、イケアというブランドイメージ向上や顧客ロイヤリティー強化につなげている。

 また、多彩なフードメニューで顧客の来店を促すことで、さまざまなデータの収集がしやすくなる。例えば、どの時間帯にどの商品が売れているか、家族連れと単身客での購買行動に違いはあるのかなどといったデータだ。

 これらのデータを、店舗レイアウトの最適化や商品ラインアップの強化など、マーケティング戦略全般に生かしているのではないか。

●イケアの戦略は他企業にも応用可能

 イケアは50円ソフトクリームをはじめとする激安フードメニューを通じ、価格以上の価値を提供することで顧客満足度を高め、ファンを増やした好例である。それにより、顧客体験向上と収益化の両方を実現している。

 この戦略は他企業にも応用可能であり、顧客満足度を高めながら持続的な成長を目指す上で、大いに参考になるものだ。イケアの取り組みは、顧客との関係性を深化させ、ブランドの価値を高めるための効果的な手法であるといえるだろう。

●金森努(かなもり・つとむ)

有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師

金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。

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