「おせちの絵本」が異例の9万部超え 『ぐりとぐら』出版元が手掛ける、写真超えたリアルさが話題に
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月23日 18時35分
『おせち』の版元である福音館書店(編集部撮影)
年の瀬が迫る中、一冊の絵本が担当者も“異例”と驚く売れ行きを見せている。『ぐりとぐら』などのベストセラー絵本で知られる老舗出版社、福音館書店(東京都文京区)が11月に発売した『おせち』(文・絵 内田有美/料理 満留邦子/監修 三浦康子、1100円)だ。
『おせち』は、伊達巻やきんとんといったおせち料理を1品1品紹介していくという、ごくシンプルな構成の絵本。「おせちりょうりって しってる?」という問いかけから始まり、「くろまめ ぴかぴか あまい まめ まめまめしく くらせますように……」のように、おせち料理の由来が平易な言葉で語られている。まるで写真のような、写実的なイラストも特徴だ。
もともとは同社が4~5歳向けの月刊絵本として販売している『こどものとも 年中向き』のラインアップとして世に出た作品。2024年1月号として発売したところ、「こんな本が欲しかった」とSNSで大きな反響を呼び、たちまち品切れに。同シリーズとしては異例という、2度の重版を記録した。
好評を受けて11月に発売したハードカバー版は早くも6刷を重ねており、発行部数は9万部を突破。絵本の売れ筋はベストセラーが多いともいわれるが、なぜこれほどのヒット作となったのか。担当者に背景を聞いた。
●なぜ「写真のような絵」に?
おせち料理を絵本にするというアイデアは、同社の関根里江さん(こどものとも第一編集部 編集長)が長らくあたためていたもの。「私自身、おせちを省略形ですが毎年作っています。言葉遊びの面白さや、昔の人が込めた思いを、子どもたちに分かりやすく伝えられたらと長年思っていました」(関根さん)
そんな中、2020年からのコロナ禍で社会が大きく変化。健康に対する不安が広がる中で「『家内安全』や『長寿』といった願いが込められたおせちの本を世に出したい」との思いから、実際の企画を始動させたという。
写真と見紛うようなリアルな絵は、企画当初からこだわっていたポイントだという。「目や口を付けて擬人化したり、デフォルメしたりしなくても、おせち本来の美しさは子どもたちに伝わると考えました」(関根さん)
そこで同社は、雑誌に掲載されるお菓子などの絵を手掛けてきたイラストレーターの内田有美さんに作画を打診。「実物をもとに描く」という内田さんの創作スタイルに合わせて、料理研究家の満留(みつどめ)邦子さんに「おせち作り」を依頼した。「内田さん自身の『おいしそう』という実感や、感じた匂いなども踏まえて表現することで、写真の印象よりも柔らかく、温かみのあるイラストに仕上がりました」と関根さんは話す。
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