1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

AIが求める大量の水と電力、どうまかなう? 環境と社会へ配慮したデータセンターの挑戦

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月26日 8時10分

 その他にも、Cerebras CS2、Groq LPU、Google TPU、AWS Trainium/Inferentiaなど、ASICアーキテクチャのAIチップが登場してきており、性能だけでなく消費電力の観点でも注目される技術である。

 次に、データセンターの冷却方式を見直すことによる電力効率改善も注目されている。現在は、空冷が主流であるが、消費電力の観点では課題がある。送風機に使う電力が大きい点や、サーバの冷却効率が低い点などだ。

 特にGPUのような筐体(きょうたい)あたりの発熱量が大きい機器に対しては、空冷の限界が見えつつある。そこで、サーバラック内の配管に冷却水を送る「液冷」や、絶縁性の液体にサーバを浸して直接冷却する「液浸」などが今後の候補となる。

 国内のデータセンターにおいても、NTTコミュニケーションズがサーバのヒートシンク(GPUなどのチップからの熱を放熱するためにつけられている部品)へ直接液体を供給する「直接液冷」を採用したデータセンターサービス「Green Nexcenter」を2025年3月より提供を開始する計画である。

●AI需要に伴う水利用量の増加に対する取組み

 水の消費量削減の観点でも冷却方式の見直しは重要である。前述したように従来の空冷システムでは、冷却水の一部が蒸発することで大量の水を消費する課題があった。Microsoftは、「クローズドループシステム」という設計を採用し、水が蒸発しないようにしながら冷却を行うデータセンターを発表した。これにより、新しい水を補給する必要がないため、年間1億2500万リットルほどの水使用を削減できるとのことだ。

●データセンターの今後

 先に挙げた、米テキサス州電力規制当局や、米連邦エネルギー規制委員会の事例以外にも、規制によってデータセンター側へ改善を求める動きは欧州でも始まっている。

 欧州委員会は、Energy Efficiency Directive(EED)を改正し、データセンター事業者にエネルギー使用量や効率の実績開示を求める制度整備を要請した。また、ドイツではEEDで求められる情報開示の項目に加えて、独自にデータセンターの効率要件を定めている。

 今後もAI向けのデータセンター新設やエネルギー消費の増大の流れを考えると、同様な規制の動きは、世界各国で広まっていくと考えられる。

 データセンターは、AIによる革新の基盤として重要な役割を担っている。これまでも、再生可能エネルギーの利用や効率的な冷却技術の導入などにより、環境や社会へ配慮した運営を実現してきたが、今後も登場する先進技術を支えるべく、データセンターにおいても技術革新が求められる。持続可能な運営に向けて、データセンター産業は大きな転機を迎えているといえる。

●著者プロフィール:坂下 悠貴(さかした ゆうき) 

 野村総合研究所 IT基盤技術戦略室 エキスパートストラテジスト。クラウドおよびITインフラ領域での研究開発を大手メーカー研究所で経験後、2021年より現職。技術戦略策定、研究開発推進、新規事業企画などに従事し、技術革新を推進する役割を担っている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください