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ココイチに勝てる? 吉野家HDが立ち上げた「カレー専門店」に行ってみた 現地で「良く絞り込まれている」と感じたワケ

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月3日 5時55分

 から揚げが定着した背景には、コストパフォーマンスの良さがあるだろう。ランチ価格が1000円を超えるのも当たり前になった昨今、800円台で満腹感を得られるメニューは、特に男性客にとってありがたい存在だ。堅調なから揚げ店を前に、吉野家はから揚げ専門店に勝機を見出したのではないだろうか。

●カレー専門店「もう~とりこ」はココイチを参考にした?

 もう一方の新業態店が、12月1日にオープンしたカレー専門店 もう~とりこである。立地は浅草、雷門からやや離れた六区ブロードウェイ商店街。看板には「しあわせのビーフカレー」と大きく書いてある。浅草にあるとはいえ、インバウンドを意識した店舗づくりにはなっておらず、日本人をターゲットにしていると思われる。店内には注文用のタッチパネルがあるが、英語メニューはなかった。

 「ビーフカレー」は858円、ご飯がオムライスになっている「オム玉ビーフカレー」は1078円だ。フライドオニオンや食べるラー油などの副菜は、2品まで無料でトッピングできる。何より、ココイチのようにご飯の量や辛さを追加料金で変更もできる点は注目だ。

 同様に生玉子やコロッケ、チキンカツなど有料トッピングも追加可能で、ココイチを参考にしたと思われるシステムが随所にみられる。ただし、トッピングのバリエーションはココイチが圧倒しているように感じた。

 筆者は「チキンカツスパイシービーフカレー」を注文した。カレーの味は良くも悪くも「スタンダード」、揚げたてのチキンカツは衣がサクサクである。確かにメニュー数は少なく、バリエーション選びの楽しさはココイチに劣ってしまうが、良く絞り込まれている印象だ。サッと食べるカレー店としては適している。

●今後も「牛丼」以外に注力か

 カレー業態では約1200店舗のココイチがダントツだ。松屋フーズの「マイカリー食堂」も勢力を伸ばしており、専門店及び松屋との併設店形式を含めると約150店舗を展開している。ココイチが少しずつ店舗数を削減している近年でも、マイカリー食堂は併設店を強みに店舗数を増やしてきた。もともと松屋でもカレーを提供しているため「牛丼チェーンが運営するカレー店」として消費者に受け入れられやすい素地があったのは強みだろう。吉野家も松屋と同じ道を歩もうとしているのかもしれない。

 吉野家HDの主なブランドは、国内店舗数が約1200店の吉野家と、約400店のはなまるうどんである。いずれも頭打ちとなっており、以前のような成長は期待できない状況だ。吉野家は海外も横ばいに推移している。そんな中、同社は第3の柱としてラーメン事業やその他事業の拡大を目指す方針を公表している。ラーメン事業では以前にM&Aで取得した「せたが屋」などを運営している。

 新たにオープンしたから揚げ専門店とカレー専門店も第3の柱を見出す試行錯誤といえる。両業態が成功するかどうかは未知数だが、新たな収入源を確保すべく、吉野家は今後も新業態を開発していくことだろう。

●著者プロフィール:山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。

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