日本の研究開発が危ない 旭化成社長が「AIは武器になる」と確信したワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月18日 14時37分
いまは日本全体で、工場現場にいるベテラン社員がかなり減少しています。紙でしか残っていない過去のさまざまな記録などをデータ化しておくと、トラブルが起きた時にベテラン社員がいなくても対応できるなど、危険予知の対策は人手不足だけでなく経験不足を補う重要なツールになると思います。
――旭化成は早くからDXに取り組み、DX銘柄にも選ばれてきました。その狙いは何でしょうか。
やや先行投資型で2020年前後から人材を集めて「デジタル共創本部」という組織を作りました。その本部長には日本IBM出身の久世和資氏に就任してもらい、旭化成のDXを進めてきました。
DXで最も重要なのは現場だと考え、現場とどのようにリンクさせていくかを真剣に検討してきました。現場が主役でDXはそのためのツール。この考え方のもとにスタートしたので、活動に説得力が出てきて、社内の理解を得られました。こうしたことが評価されてDX銘柄にも選ばれてきたのだと思います。
――過去に米国のロイカ工場閉鎖などを経験されてきました。事業を撤退するときに心掛けていることは何ですか。
繊維事業で育ってきましたが、1990年代にナイロン、2002年にレーヨン、2003年にアクリル繊維、2009年にポリエステルなど汎用繊維を続けざまに撤収してきました。私が弾性繊維のロイカ事業部長だった時に、買収した米国工場の撤収を進めました。
撤収は最後の選択肢です。それまでに引き取ってくれる会社があれば事業を譲渡して、働いている従業員が職を失わない方策を取るのが良い選択なのです。
2024年は血液浄化事業と、診断薬事業の2つの譲渡を決定しました。譲渡先の会社の、この事業や投資に対する考え方、成長へ向けての見方が極めて納得できるものでした。従業員は旭化成を離れることによって寂しい思いをするでしょうが、新しい会社のもとで運営した方がさらに事業が発展し、成長できると考え、事業譲渡を決めました。もしそうでなければ、事業を譲渡しても従業員が不幸になります。
――2018年の繊維事業本部長時代には、米国の自動車内装材メーカーのセージ社の買収を指揮しました。どういう狙いだったのでしょうか。
この買収では、大きな経験をさせてもらったと思っています。
繊維事業本部長だった当時は、撤収が多かった繊維分野を、いかにして成長させていこうかと考えていました。そんな時に、セージ社は自動車の内装材として強い繊維素材を持っていたので、買収することによって当社の繊維事業を強くしたいという思いがありました。
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