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楽天モバイルが“大幅前倒し”でプラチナバンドを運用開始できたワケ “飛びすぎない”対策も必須に

ITmedia Mobile / 2024年6月29日 6時5分

 こうした事情もあり、楽天モバイルのプラチナバンドはあくまで屋内対策といった部分に力点が置かれている。設置した基地局も、「電気的にかなりチルトをかけ、下に向けている」(南里氏)。楽天モバイルの設置した基地局は、1.7GHz帯と700MHz帯のチルト角を個別に調整できるというが、700MHz帯は電波が飛びすぎないよう、1.7GHz帯より大きく下に傾けているという。プラチナバンドだからといって、一気に圏外を解消できるわけではない。

 また、700MHz帯の3MHz幅は、2レイヤーのMIMOを入れ、変調方式を256QAMにした場合でも、下りの速度は約30Mbpsしか出ない。複数の端末がつながった場合や条件が悪いと、スループットはこれよりさらに遅くなる。プラチナバンドが導入されたからといって、もともと楽天モバイルの電波が入っていた場所でスループットが向上するわけではない点には注意が必要だ。プラチナバンドは、あくまで音声通話や最低限のデータ通信をするための“穴埋め”として活用される。

 楽天モバイル側も、スループット向上のために活用することは考えていないようだ。現状、700MHz帯の3MHz幅はキャリアアグリゲーション(CA)ができない。「(携帯電話の標準仕様を定める)3GPPの規格上、CAの対象外になっているため単独での運用になる」(竹下氏)からだ。南里氏は、「1.7GHz帯で圏外になるお客さまに電波をお届けするという意味では、仮に標準化ができたとしても、CAはやらない方がいいかもしれない」と語る。「徹底的な負荷分散という観点だと、CAがない方がいい事例もある」(竹下氏)という。

 楽天モバイルは、同時に5Gのエリアが出力向上で拡大していることを発表しており、2024年内には関東エリアのカバー範囲を最大1.6倍にしていく予定。衛星通信の地上局と干渉調整が済んだ東海地方や近畿地方では、それぞれ1.7倍、1.1倍にエリアが広がっている。また、Massive MIMOのビームフォーミング機能拡張や4G、5Gのハンドオーバーの改善によって、通信品質を向上させている。トラフィック対策は、やはり5Gの拡大が中心になる。

●急ピッチでスタートしたプラチナバンド、完全仮想化もプラスに

 700MHz帯の運用を始めたばかりの楽天モバイルだが、同社は現在、ローミングという形でKDDIから800MHz帯を借りており、エリアの補完に活用している。自社のプラチナバンドとKDDIローミングのすみ分けはどうなっていくのか。竹下氏によると、「KDDIのローミングは人口カバー率99.9%を補完してもらうのが目的だが、あまりご迷惑をおかけしてもいけないので、基本的にはわれわれでさばいていくことになる」という。

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