お尻で呼吸する「EVA法」、イグ・ノーベル賞を受賞 日本人の受賞は18年連続
ITmedia NEWS / 2024年9月13日 12時44分
イグ・ノーベル賞
人々を笑わせながらも考えさせる研究に贈られるイグ・ノーベル賞の授賞式が9月12日(現地時間)に米国ケンブリッジで行われ、“哺乳類が肛門で呼吸する方法”を発見した日本医科歯科大学の武部貴則教授らの研究チームが生理学賞を受賞した。日本人の受賞は18年連続となった。
研究のきっかけは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で重症化すると、呼吸不全などが最終的な死因となるケースがあったこと。一時話題になった体外膜型人工肺(ECMO:エクモ)は台数が限られる上、人体への負担も大きく、呼吸を補助する治療法が求められていた。
武部教授らが着目したのはドジョウの腸呼吸だった。ドジョウが水面に浮かび出て空気を飲み込み、肛門から気泡を出すことを古くから知られていたが、排出されるガスを分析すると酸素が減少し、炭酸ガスが増えることが先行研究で報告されていた。
人間など哺乳類の腸もドジョウと同様、腸管粘膜に毛細血管が密に分布している。同じことができるのではないかと考えた研究チームは、マウスやブタの直腸に酸素を多く含む「PFC」(パーフルオロカーボン)と呼ばれる液体を投与。すると静脈などで酸素濃度が上昇し、酸素の供給源として機能することが分かった。
研究チームは、お尻を介して腸から酸素を取り込む「腸換気(Enteral Ventilation via Anus:EVA)法を開発し、2021年に論文を発表。臨床現場において、新たな呼吸管理法として応用できる可能性を示した。
発表後はSNS上でハッシュタグ「♯ButBreathe(お尻呼吸)」が話題に。「EVA法」というネーミングについても、同じく液体を介して呼吸する描写が出てくる人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を思わせると盛り上がったという。研究内容を紹介した日本科学未来館のブログは、イグ・ノーベル賞受賞を予想していた。
イグ・ノーベル賞は、人々を笑わせながらも考えさせる業績を讃えるため、1991年に米国の雑誌「Annals of Improbable Research」が創設した。日本人の受賞は18年連続で、昨年は微弱な電気で食べ物の塩味を増す研究が評価された明治大学・宮下芳明教授らの研究チームが受賞している。
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