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洞窟で見つかった“1万7000年前に生きていた幼児” DNAを解析 「青い目」「親はいとこ同士」などを物語る

ITmedia NEWS / 2024年10月9日 8時5分

洞窟で見つかった“1万7000年前に生きていた幼児” DNAを解析 「青い目」「親はいとこ同士」などを物語る

Le Mura 1の遺骨

 イタリアのボローニャ大学やフィレンツェ大学などに所属する研究者らが発表した論文「Life history and ancestry of the late Upper Palaeolithic infant from Grotta delle Mura, Italy」は、約1万7000年前に生きていた幼児の遺骨について、多角的な分析が行われた研究報告である。

 1998年、イタリア南部プーリア州の「Grotta delle Mura洞窟」の床下で、岩板の下に丁寧に埋葬された幼児の骨格を発見した。この洞窟では日常生活や人間の居住の痕跡も見られたが、この幼児の埋葬だけが唯一のものだった。

 今回研究チームは、約16.5カ月(~72週)で亡くなったこの小さな男の子の遺骸(Le Mura 1と名付けた)に対して最新の分析技術を適用した。放射性炭素年代測定によると、この骨格は1万7320年から1万6910年前のものと推定され、これは地球の気候が最終氷期の最寒冷期から温暖化し始めた頃に当たる。

 南イタリアのような温暖な気候下では、古代の骨格のDNAは通常大きく劣化してしまうが、この子供の骨は洞窟の冷涼な環境下で良好に保存されていた。これにより、研究者たちは幼児のゲノムの約75%を回収できた。

 このゲノム解析により、子供の祖先、身体的特徴、さらには特定の健康状態についても推測を行えた。遺伝子に基づく予測では、子供の肌の色は現代のヨーロッパ人よりも濃かったが、熱帯気候の人々ほど濃くはなかった。巻き毛の濃い茶色または黒に近い髪を持っていたと推定。青い目を持っていた可能性が高く、これは西ヨーロッパの狩猟採集民に淡い目の色が存在したという最近の発見と一致している。

 ゲノムはまた、この幼児が家族性肥大型心筋症(FHCまたはHCM)を患っていた可能性を示唆した。これは心筋の肥厚を引き起こす遺伝性疾患で、若年者でも心不全や死亡につながる可能性がある。両親は近親関係、おそらくいとこ同士だったと考えられる。

 多くの古代の狩猟採集民と同様に、この赤ちゃんは乳糖不耐症の遺伝子を持っていた。これは北ヨーロッパで農業と家畜飼育が始まってから徐々に減少し始めたとされている。

 歯のエナメル質に見られる成長線の分析から、胎児期から生後にかけて少なくとも9回の生理的ストレスを経験していたことが分かった。これは赤ちゃんの先天性の心臓疾患によるものかもしれないが、母親が妊娠中に十分な栄養を摂取できなかった可能性もある。さらに、赤ちゃんの鎖骨の骨折は、難産だった可能性を示唆している。

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