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中国の衛星、“星より明るすぎて”星空鑑賞に影響か 約1万4000基の打ち上げ計画中、最初の18基だけで 国際天文学連合が発表

ITmedia NEWS / 2024年10月11日 8時5分

中国の衛星、“星より明るすぎて”星空鑑賞に影響か 約1万4000基の打ち上げ計画中、最初の18基だけで 国際天文学連合が発表

中国の衛星、“星より明るすぎて”星空鑑賞に影響か

 国際天文学連合(IAU)などに所属する研究者らが発表した論文「Brightness of the Qianfan Satellites」は、8月に打ち上げられた中国の衛星の明るさを調査した研究報告である。これらの衛星は、その明るさが軽減されない限り、天文学研究や夜空の美しさの鑑賞に影響を与える可能性がある。

 中国政府が支援する上海スペースコム衛星技術(SSST)が計画する約1万4000基の衛星からなる「メガコンステレーション」(100基以上の小型衛星を運用し、データや通信の収集・利用を行う事業)の構築が始まった。しかし、最初の18基の打ち上げだけで、夜空への影響について天文学者から懸念の声が上がっている。

 「千帆」(Qianfan)と呼ばれるこのメガコンステレーションは、地上にインターネット接続を提供することを目的としており、すでに6000基以上の衛星を展開している米SpaceXのStarlinkに対抗するものである。

 Qianfan衛星は地球の赤道に対して89度傾いた極軌道に配置されており、その高度は約800kmである。これはStarlinkの低軌道衛星とOneWebの高軌道衛星の中間に位置する。

 8月12日から9月9日にかけて行われた観測では、Qianfan衛星の見かけの等級が天頂付近で4等級、空の低い位置で8等級の範囲に及ぶことが明らかになった。この明るさの変化は主に衛星までの距離の違いによるもので、天頂に近いほど地上からの距離が短くなり、逆二乗の法則により明るく見える。

 物理モデルの分析によると、Qianfan衛星の明るさは主に2つの要素によって説明できる。一つは地球に向いた平らなアンテナパネル、もう一つは天頂に向いた太陽電池パネルの裏側である。両方のパネルがランバート反射特性を持つと仮定すると、観測結果とよく一致する。このモデルは、衛星の姿勢が地球に対して常に水平に保たれていることを示唆している。

 Qianfan衛星の明るさは、天文学的観測に深刻な影響を与える可能性がある。例えば、ルービン天文台が計画している「Legacy Survey of Space and Time」(LSST)プログラムでは、7等級より明るい衛星の軌跡を画像から効果的に除去することができない。

 一方、肉眼での観測限界は約6等級である。Qianfan衛星は、空の低い位置で観測される場合を除いて6等級より明るいため、プロフェッショナルな天文観測だけでなく、アマチュア天文家の活動や一般市民の星空観賞にも影響を及ぼす恐れがある。

 さらに、Qianfanの運用計画では、最終的に衛星を500kmと300kmの軌道に配置する予定だという。より低い軌道に配置されれば、衛星はさらに1~2等級明るく見える可能性がある。

 Source and Image Credits: Anthony Mallama, Richard E. Cole, Bram Dorreman, Scott Harrington, Nick James. Brightness of the Qianfan Satellites

 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2

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