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「酒が人を不道徳にする」のではなく「もともと不道徳な人が酒を飲む」――飲酒後の判断力に関する2019年の研究

ITmedia NEWS / 2025年2月12日 8時5分

「酒が人を不道徳にする」のではなく「もともと不道徳な人が酒を飲む」――飲酒後の判断力に関する2019年の研究

アルコール摂取が共感性と道徳的判断に与える影響は?

 英プリマス大学に所属する研究者らが2019年に発表した論文「Alcohol, empathy, and morality: acute effects of alcohol consumptionon affective empathy and moral decision-making」は、アルコール摂取が共感性と道徳的判断に与える急性効果について検討した研究報告である。

 この研究の背景には、人々が道徳的なジレンマに直面した際の判断に関する重要な疑問がある。例えば、5人の命を救うために1人を犠牲にすることは正しい選択なのかといった問題だ。

 従来の研究では、このような道徳的判断において功利主義的な選択(より多くの命を救うことを優先する選択)をする傾向について、2つの対立する説明がなされてきた。1つは理性的な思考が増加することで功利主義的な判断が増えるという説。もう1つは他者への危害を回避しようとする感覚が低下することで功利主義的判断が増えるという説だ。

 研究チームは、これらの仮説を検証するため、48人の参加者を対象に実験を行った。参加者はプラセボ(偽薬)群、低用量アルコール群、高用量アルコール群の3つのグループに分けた。

 実験では、アルコール摂取の前後で、表情から感情を読み取る課題や、他者が痛がっている際の共感を測定する課題、道徳的判断を求める課題を実施した。また、文章による道徳的判断だけでなく、バーチャルリアリティーを用いた実践的な意思決定課題も含まれており、その際の生理的反応も測定した。

 実験の結果、以下の発見があった。アルコールの摂取量が増えるほど、他者の表情から感情を適切に読み取り、それに対して適切な共感を示す能力が低下することが分かった。

 しかし、他者が痛みを感じている場面を見たときの反応(他人の痛みに対する共感的な反応)は、アルコールを飲んでも変化しなかった。また、上記のような道徳的なジレンマにおける判断や行動には顕著な変化が見られなかった。この結果は、アルコール摂取と道徳的判断の低下の関係が説明できないことを示唆している。

 つまり、アルコールを摂取することで表情認識のような一部の社会的認知能力は影響を受けやすいが、道徳的判断のようなより複雑な意思決定プロセスは頑健であり、アルコールを飲んで不道徳な行動を取る人はもともと不道徳である可能性を示唆している。

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