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鑑賞後にめちゃくちゃ考え込んじゃうこと必至! エンドロールで身の毛のよだつ感覚に襲われる映画「関心領域」

ねとらぼ / 2024年6月8日 21時30分

 しかし同時に、「地獄無視パワー」みたいなものが突き抜けている超利己的な人物も「関心領域」には登場する。ヘスの妻、当然のような顔で高級コートをぶんどっていったヘートヴィヒがそれである。彼女は夫の転勤に怒り狂い、「長年かけて生活しやすい環境を整えたのに、なんで出ていかなきゃいけないの!?」「行くならあなた一人で行って!」とヘスを無理やり単身赴任させるのである。

 ヘートヴィヒは、ドイツ人の感覚からすれば東方のへき地であろうアウシュヴィッツの環境に満足し、これからもずっとそこで生活していきたいと心底思っている。自然豊かで子育てにも向いており、住環境にも不満はなく、なにより自分で設計までした庭園をなぜ手放さなければならないのか。キレるヘートヴィヒの頭の中には「でも収容所のすぐ横である」という住環境についての不満は、1ミリも存在していない。本当に完全に「いないもの」になっている。

 タイトルの「関心領域」を極限まで狭め、身の回りのことだけにフォーカスして生活すれば、このヘートヴィヒのような人物が出来上がることだろう。そうならないためには、塀の向こうから聞こえてくる悲鳴に違和感をもち、おかしなことをおかしいと思う感覚を身につけるほかない。あまりにも当たり前の結論だが、当たり前のことを当たり前に実行するのがいかに難しいかは、この映画が丁寧に描いている。

 「関心領域」はとにかく音響が主役の作品である。そりゃアカデミー賞の音響賞取るわ……と納得するほど音による主張が激しいので、できれば音響のいい映画館での鑑賞をお勧めしたい。ひたすら劇中で流れ続ける騒音、そして溜まりに溜まった怨嗟が爆発するような、怖すぎるエンドロールの音楽を聞けば、音のいい映画館なら必ず身の毛のよだつ感覚を味わえるはず。超ヘビーな内容だが、それでも映画館に行って2時間弱座り続け、直視するだけの価値はある作品だと思う。

(文:しげる)

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