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アニメ映画版「ルックバック」レビュー 「創作」の意義を見つめた、ひとつの到達点

ねとらぼ / 2024年6月29日 20時0分

 押山監督は同インタビューで「アニメでもリアリティを表現する作風として作りたいタイプ」であることも、結果的に実写の俳優を多く起用した理由だと語っている。その甲斐あって、河合と吉田は共に声優初挑戦ながら、いい意味での「アニメっぽくない生々しさ」を出しており、「ルックバック」の作風とキャラクターにマッチした、最高のキャスティングおよび演技だった。

●限りなく「1人で作った」アニメ表現の凄まじさ

 押山監督は、本作で「脚本・絵コンテ・キャラクターデザイン・作画監督」でクレジットされている。絵コンテを1人で描き、自分で仮のアフレコと音楽をつけてビデオコンテを作成し、原画も半分ほど担当。作画監督としてのクレジット通り、他のアニメーターから上がってきた原画のほとんどに手を入れていたという。

 もちろん、本作には「原動画」でクレジットされている井上俊之を筆頭に、現代を代表する有数のアニメーターが少数精鋭で参加しており、この特殊な制作体制を支えている。その力なくしては完成しなかったと押山監督も語っており、それによって「限りなく個人制作に近い感覚で作業できた」とも振り返っているのだ。

 X(旧Twitter)で76万人超のフォロワーを誇る「小学3年生のながやまこはる(実際に運営しているのは原作者の藤本タツキ)」のアカウントにて、「絵の凄く上手い監督がほぼ一人で全部描いているらしい」と投稿されていたが、本当に「限りなく押山監督成分の濃い」作品なのだ。

 その事実も凄まじいが、原作の荒いようで繊細な、密度のあるリアル寄りの絵を、崩れないようにアニメに落とし込むことが、どれほど難しいことかは、想像を絶するものがある。その上で、実際に出来上がった本編での、ダイナミックな表現の数々に圧倒された。

 特に「京本が部屋から廊下へ飛び出して藤本を追いかける」「藤本が雨の中でスキップする」様は、「原作では数コマの、それはそれで完成された絵で描かれたことを、アニメで全力で表現するとこうなるのか」という感動があった。

 原作者の藤本は今回の劇場アニメ化にあたり、「押山監督はアニメオタクなら知らない人がいないバケモノアニメーターなので、一人のオタクとしてこの作品を映像で見るのが楽しみ」などとコメントを寄せていたが、実際に出来上がった本編は、その期待値をも軽く超えていたのではないだろうか。藤本は鑑賞後に、「製作に関わってくださった方々の才能と熱量が伝わってくる」「自分では拾えなかった部分も丁寧に汲み取ってくれた」との投稿をしている。

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