[久保田弘信]【どうする?ネット私刑の時代】~川崎市中一殺害事件~
Japan In-depth / 2015年3月6日 11時30分
週刊新潮が最新号で川崎市の中学1年上村遼太さん殺害事件で、逮捕されたリーダー格の少年(18)の実名と顔写真が掲載されたことが論議をよんでいる。週刊新潮編集部は18歳少年の顔写真について、少年自らツイッターに投稿したもので、友人らに本人と確認したと説明。「事件の残虐性と社会に与えた影響の大きさ、少年の経歴などを総合的に勘案し、実名と顔写真を報道しました」とコメントしている。
今までにない凶悪な事件が起き、政府も少年法改正の必要性を議論しはじめている。18歳という年齢が昭和の時代のように、まだまだ子供で保護すべき対象である時代は終わりつつあるように思える。善かれ悪しかれ、ネットとスマホの発達で子供達は以前に比べ格段に情報を吸収し、自身も子供だとは思っていない。
とはいえ、法の整備が整う前の実名報道に対して日弁連会長が「報道に不可欠ではない」と遺憾声明を出している。「憲法21条が保障する表現の自由が極めて重要であるとしても、少年の実名等が報道に不可欠な要素とはいえない」と見解を述べている。が、問題は表現の自由ではなく「知る権利」の方の比重が大きいのではないかと思う。
以前に犯罪被害者の本に携わることがあり、身内を殺害された被害者の家族にインタビューさせてもらう機会があった。和歌山の事件も今回も被害者の名前は実名報道され、遺族が「ひっそりと暮らして行きたい」とコメントしても、連日マスコミが押し寄せる。犯罪被害者の家族は犯罪者のプライバシーが守られ、被害者のプライバシーが守られないなんておかしい!と話した。
少年犯罪に対しては慎重になるべきだが、時代にマッチした法律に改正していく議論をストップしてはいけないと思う。悪さした経験がある後輩は「未成年だし、刑務所に行くことはないと分かっていたから、フツウにやれましたよ。今はもう無理ですね~」と話した。少年法を理解した上で今なら罪も軽いから犯罪してもいいと思っている若者も多い。
イギリスでは10歳から刑事責任を問われる。さすがに10歳からはやり過ぎで年齢を引き上げるべきだとの意見もある。年少犯罪者に対して厳しい姿勢で臨むイギリスでは殺人などの凶悪犯罪では実名報道されることが多い。欧米のように国民の「知る権利」を尊重する国では少年犯罪であっても凶悪な殺人事件等は実名報道する国が多い。
少年犯罪に限らず、性犯罪など再犯率が高い犯罪に関しては被害者が二度目の被害者になってしまう可能性も高く、「知る権利」が重要となってくる。人権との兼ね合いで難しい問題だが、性犯罪の再犯者にはチップを埋め込んでGPSでその所在を管理する方法が取られる国もある。
先にも述べたように、週刊新潮が少年実名報道に踏み切った理由の一つに、主犯格の18歳少年の顔写真がツイッター上に出回っていて多くの人の目に触れる状態にあることが考えられる。2chでは加害者である少年の家族の写真や自宅の動画まで公開され、「私刑」が横行している。
インターネットの発達によって個人でも情報を発信できる時代。歯止めがきかない「私刑」のような情報発信がされるくらいなら、大手メディアがちゃんと報道した方が良いのかもしれない。
この事件に限らず、「報道の自由」と「個人の権利」、そして「知る権利」に関しては議論を続けて行く必要があると思う。
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