[Japan In-depth 編集部]【石巻・大川小学校卒業生、校舎保存訴える】~世界防災ジュニア会議にて~
Japan In-depth / 2015年3月17日 18時0分
宮城県仙台市で14日開催された国連防災世界会議のパブリックフォーラムの一つ、「世界防災ジュニア会議」子どもたちの目線で防災・減災を考える会議の中、3人の高校1年生がステージ上で強い思いを語った。「私たちは、被災した母校を残したいと思っています」3人は津波で甚大な被害を受けた石巻市立大川小学校の卒業生だ。74人の児童と教職員10人が死亡・行方不明となった校舎に関しては、子どもを亡くした遺族の中から解体を望む声も出ている。
校舎が大津波にのみ込まれた4年前のあの日、3人は大川小学校の6年生だった。三條こころさんは「亡くなった友達と友情をはぐくんだ思い出の場所」と校舎に対する思いを語った。また成田涼花さんは「被災した校舎を見ると、一目で津波の恐ろしさが分かる」と保存の意義を強調した。
1週間前には大川地区の復興協議会に参加し、初めて地域の大人の前で自分たちの意見を発表した。そこでは直接保存に反対する意見も聞いたという。浮津天音さんは「私の校舎を残したいという考えは、わがままなのかもしれない。残したくないという人の気持ちも十分に分かる。それでも次の世代、未来のことを考えると残したいと思う」と今の気持ちを話した。
3人のほか、同じ思いの卒業生6人は、1年ほど前から校舎の保存を訴える活動を始めている。校舎保存の意義を語る時、例に挙げてきたのは広島の「原爆ドーム」だ。
原爆ドームを巡っても、過去には保存するか、解体するか、大きな論争があった。戦後21年経って広島市が保存を決め、1996年には世界遺産に登録された。原爆ドームの前には、「悲痛な事実を後世に伝え人類の戒めとする」と保存の理由が書かれている。今は平和公園の一角にある原爆ドームだが、建物の周辺は、被爆前は繁華街で多くの民家や商店があった。家族を失った人にとってドームは未だに辛い記憶を呼び起こす存在でもある。
戦後長い年月が経ち、ドームの前でピースサインをして記念写真を撮る観光客を見て、胸を痛めた被爆者も実際にいる。しかし、復興を遂げビルが建ち並ぶ広島市の中で、原爆の脅威をこれほどまざまざと見せつける場所はもう他には残っていない。戦争を知らない世代に対しても、その姿は、過去に広島に起こった悲劇を無言のまま、しかし強烈に伝えている。
東日本大震災の被災地では、被災した建物などを「震災遺構」として残すか否かについて、様々な場所で議論がある。心情の問題に加えて、保存にかかる費用や方法についても十分な検討が必要だ。あの日から4年、大震災を経験した大川小学校の卒業生たちもこの問題を受け止め、自分たちで考え、自分たちなりの発信を続けている。彼女たちは、大切な学舎の行く末について「大人が考えること」と傍観するつもりはない。
意見発表した3人の高校生は、校舎の保存に関する様々な声について「誰ひとり間違っている人はいない」とした上で、こう語った。「これから先の子どもたちに何を残せるだろうか。私たちが出来ることは語り継ぐこと。こんなことが二度と起こらない為にも小学校を残したいと訴えていきたい」
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