[朴斗鎮]【いびつな民主主義国家、韓国】~資本の「毒素」除去に失敗~
Japan In-depth / 2015年3月25日 22時55分
所得と富の分配問題を中心テーマとしたトマ・ピケティ教授の講義「パリ白熱教室」をNHKテレビで見た。300年にわたる膨大なデータの分析に基づき、資本の運動を放任すると所得格差はますます広がり冨は一極集中へと向かうと説いていた。いま世界の庶民が感じている「格差拡大のなぜ」に一つの回答を与える示唆に富む主張であった。
ピケティ教授の研究が、資本論の「労働者階級窮乏論」と似ているとしてマルクスと関係づける論者もいるが、ピケティの主張はマルクスとは根本的に異なる。マルクスのように資本の本質を「限りなき利潤の追求」とし、その人格的体現者たる資本家を打倒しなければ平等社会は実現しないなどとは主張していない。
人間の経済的創造物である資本の役割を認めつつも、しかしその力を放任すると人類の発展と幸せを阻害することになると警鐘を鳴らしているのである。彼が問題にしているのは、「格差を広げる資本の暴走」と「富の世襲化」、そしてそれによる「教育の不平等」だ。
したがって国家を階級闘争の産物、階級支配の道具としか見ないマルクスの国家観とも異なる。ピケティ教授は国家財政、特には税制を通じた富の再分配に大きな役割を付与している。ある意味で国家を通じた「資本のコントロール」を主張しているのだ。
事実、資本主義と民主主義は同一ではない。資本主義は資本の運動に忠実であろうとするために国家権力の介在を嫌う。しかし民主主義は主権在民の下で国民の生活向上のために国家権力の活用を促す。資本主義の市場原理は、大衆が物事を決する「民主主義」の要求と一致する面もあるが、「限りなき利潤の追求」による富の独占によって民主主義を否定する「毒素」も含んでいる。
民主主義と資本主義を調和させるには、この「毒素」を絶えず除去していかなければならない。そのためには民主主義の安定を担保する「中産階層」を分厚くする分配と再分配が必要だ。しかし最近の先進国の傾向は「成長あっての分配」「上流あっての下流」という「分配論」が幅を利かせ、所得格差の拡大と「中産階層」の縮小をもたらしている。
この資本の「毒素」除去に失敗している「民主主義国家」の一つが韓国である。韓国社会は経済成長を急ぐあまり財閥依存経済に陥り、いびつな「民主主義」を生み出した。与党は「新自由主義」の毒素を吸い、野党は「北朝鮮独裁の毒素」を吸い続けている。与野党の対立が民主主義発展につながらないのはそのためだ。
十数年前、オーストラリアに移住したある韓国婦人は私に「韓国は楽しい地獄、オーストラリアは楽しくない天国」と表現した。また南米のある国での生活を経験した韓国紳士は「南米ではお金が法を支配する」「韓国はお金で法を曲げられる」「オーストラリアではお金で法は変えられない」とその違いを語った。今思い出しても含蓄のある言葉だと思う。
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