[田村秀男]【中国主導インフラ投資銀行は機能しない】~チャイナ・リスクを見極めよ~
Japan In-depth / 2015年3月26日 23時0分
しかも、外準をおいそれと対外融資の財源に使えるはずはない。中国の金融制度というのは、中国人民銀行が流入する外貨に見合う人民元資金を発行する。外貨を取り崩そうとすれば民元資金供給を減らさざるをえなくなる。すると国内経済にデフレ圧力がかかる。外準は見せ金にしか過ぎなく、惜しみもなく対外信用供与に回すはずはないのだ。
対外資産から対外負債を差し引いたものが「対外純資産」である。純資産が多ければ、それだけ外部からの借金に頼らず、外部により大きな債権を持つのだから「債権大国」と呼ばれる。第1位は日本、第2位が中国、3位がドイツで、3カ国を比べたのが本グラフ(トップ画像参照)である。
中国の対外純資産は14年9月末時で1.8兆ドルの対外純債権を持ち、日本に次ぐが、外準を除くと、負債は資産を2.4兆ドルも上回る。外準も資産には違いないが、融資や証券のような他の金融資産と同列に扱うことはできない。実質的な中身からすれば、中国は「債権大国」どころか、債務大国なのである。
ロンドンなど国際金融市場にとってみれば、資本逃避に悩む中国は国際金融界にとって発展途上国の中で最大の融資先になっている。国際決済銀行(BIS、本部スイス・バーゼル)によると、中国の海外の銀行からの借り入れ残高は14年9月末、1兆700億ドルで、前年比2800億ドル増えた。世界全体での国際銀行融資2700億ドル増をしのぐ。
英国の参加はロンドンが取り仕切る国際金融界が中国の野心の後を押し、その上がりで儲けようという強欲主義そのものだ。それは戦前、ナチスにカネを流した国際金融界の姿とダブる。英国はお得意さん中国のAIIB参加要請に応えたのだろうが、国際金融界はリスクに応じて高い金利を要求するだろう。
巨額のインフラ・プロジェクト融資が北京主導でできるはずはない。日本の金融界は国際金融市場への最大の資金の出し手である。日経新聞など国内の中国に大甘の見方には与せずに、冷静にチャイナリスクを見極めるべきなのだ。
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