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[西村健] 【地下鉄大江戸線の郊外延伸は必要か?】~東京都長期ビジョンを読み解く!その17~

Japan In-depth / 2015年4月3日 18時0分

[西村健] 【地下鉄大江戸線の郊外延伸は必要か?】~東京都長期ビジョンを読み解く!その17~

政策指針6「誰もが快適に利用できる総合的な交通体系の構築」では、「地下鉄12号線などの路線についても、課題や今後の方向性等の検討を進めている」との記載がある。これはどういうことか。

地下鉄12号線とはいわゆる「大江戸線」で、現在、練馬区の光が丘から発し、都庁前まで、数字の「6」を左に45度傾けた形で運行されている路線だ。地下鉄12号線については平成12年の審議会で大泉学園町までの整備着手が適当とされている。

これを受けて、近隣の自治体はどう反応しているのか。もちろん「我田引水」ならぬ「我田引鉄」をめざし積極的に活動している。鉄道が来れば、人口は増え、街は発展するし、商店は活気づくし、利用者の快適性は向上する。

練馬区は大泉学園町までの早期延伸を要望している。パンフレットには、現在の通勤時間との比較で、大泉学園町から新宿までの時間が21分も短縮されると推定されている。21分は通勤者にとって非常に大きい。

また、新座市、清瀬市、所沢市は、その先の延伸を求めて熱心に活動している。

新座市が実施した25年の意識調査では70%以上が延伸に賛成しているとの結果が出ている。当然のことだろう。

12号線こと大江戸線は建設費削減のため通常より小さい地下鉄が採用されている。日本の地下鉄では最深部を走行していて、耐震性に富んでいるといわれている。経営の数値を見てみよう(平成24年度東京都高速電車事業会計決算審査意見書)。

24年度、大江戸線単独では経常利益がマイナス約104億円であった。減価償却費が205億円と、費用の38.5%を占めている。これらは膨大な建設コストの支払いである。

都市高速鉄道12号線延伸促進協議会が平成17年3月に発行した「東京12号線延伸に向けた地域整備構想基礎調査報告書」という研究がある。

この報告書を見ると「高率な公的補助を前提とした場合において事業成立の可能性がある」との文言が記載されている。さらに報告書には22年度または27年度における推定人口が明記されている。

現在の人口と比較してみると、練馬区では27年度時点で推計値を上回り、清瀬市は下回っている。所沢市、新座市は22年度時点で推計値を下回った。

*筆者作成

 

これがどういったことを示すのかというと、沿線自治体が予測した通りに人口は増えていないということだ。私は条件付きではあるが、延伸には基本的に賛成である。経済指標で示されていない住民の時間創出、満足度や幸福度が想定されるからだ。しかし、使用された需要予測の手法では不十分だと思うし、都心回帰の傾向の中、開発をしても住民が増えるのか疑問もある。

長期ビジョンで「検討」と記された意味を噛みしめる。新座市の野火止用水脇にある桜を眺めながら。

 

(本記事には多くのリンクが貼られている。開くにはJapan In-depthの記事ページで読んで頂きたい)

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