[岩田太郎]【弱まるアメリカの経済制裁力】~核合意は本当に対イラン経済制裁の結果か~
Japan In-depth / 2015年4月4日 18時0分
事実、米国などがロシアのウクライナ侵攻に対抗して科している対露制裁について米経済評論家のマイケル・ハドソン氏は昨年12月11日付ブログで、「対露制裁は、米同盟国であるトルコが欧州経済の一員としての地位を捨て、天然ガス獲得のためにロシアに接近し、さらにイランをロシアに近づける結果を生んでいる。制裁を課すことで、米国は欧州やアジアで、逆に孤立しつつある」と警鐘を鳴らした。
このように効果が薄いことが多い米国の経済・金融制裁だが、過去には劇的な成功例もある。南進に邁進する我が国に対し、米国が1941年に行った石油・鉄鋼禁輸や金融制裁は効いた。米国に首を絞められた日本は、無謀な対米戦争を起こした末に、敗北した。
また、米国が2005年、北朝鮮がマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」に設けた口座を凍結した時、影響を受けた資金はわずか2400万ドル(約29億円)だった。しかし米国務省高官の言葉によれば、「米国が腕を軽くねじ曲げただけなのに、北は悲鳴を上げた」のである。当時の第二代最高指導者である金正日氏の最も重要な私的資金を、米国が意図せずして押さえてしまったからだ。北朝鮮はAIIB加盟申請を行って中国に拒絶されたが、北朝鮮の加盟への熱意はこの一件からも出ている。
経済制裁は効くこともあるが、その効果は制裁する側の権威や指導力に左右される場合が多い。衰退する米国の制裁力は将来、確実に低下するだろう。
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