[神津伸子]【平昌五輪の大きな足音が聞こえる】~女子アイスホッケー日本・スマイルジャパンの挑戦~
Japan In-depth / 2015年4月7日 7時0分
「今まで以上に強化をして、上位の国を脅かせるようになりたいと思います」スウェーデン・マルメで先月末から行われていた女子アイスホッケー世界選手権トップディビジョンで、4勝1敗とトップグループ残留を決めた藤澤悌史監督は次なる課題に目を輝かせる。
女子アイスホッケー日本代表、スマイルジャパン。今まで公式戦で未勝利だったスウェーデン、ドイツに勝ち4勝1敗で、世界7位で全日程を終了した。2018年の韓国・平昌(ピョンチャン)オリンピックに出場できるのは8か国。内、韓国が開催国出場なので、残る枠は7カ国。大会直前の世界最終予選前に、ポイントランキングで上位5位までに入っていれば、自動的に出場が決まる。日本が目指すのもこのポジショニングとなる。
女子アイスホッケーの現状は、今回優勝したアメリカ、準優勝のカナダ2強時代。それを追うロシア、フィンランド、スイス、スウェーデン、日本、ドイツという勢力図になる。日本は本大会で、そのスウェーデン、ドイツを撃破、スイスには敗れたもののシュート数で大きく上回るなどゲームを支配することが出来た。
しかも、守護神・藤本那奈選手は本大会のベストゴールキーパー賞を獲得。優勝したアメリカ、準優勝カナダを差し置いての快挙となった。1点が勝敗を左右するアイスホッケーで、ゴールキーパーの果たす役割は大変重要だ。
「厳しい試合が続きましたが、勝ちきれてよかったです。みんなが体にアザを作ってシュートブロックに入って私を助けてくれました」(藤本選手談)
<上写真:ドイツに2回、延長戦勝ち。第3戦でサドンデスで勝って、喜びを爆発させた。スウェーデンにも延長戦のち、GWS(シュート合戦)で勝利。競り勝ち出来る地力がついて来たスマイルジャパン。>
普段は、芯に強いものを秘めながらも、のんびりほんわかムードのフォトジェニックな藤本選手の世界デビューは、ロシア・ソチ五輪だった。ちょうど1年前に開催されたソチ五輪では、初めて世界最終予選で勝ち上がり、出場を果たしたものの、1勝も出来ず敗退した時からの成長ぶりに関係者も目をみはる。
大会後、飯塚祐司前監督からバトンタッチした藤澤監督が掲げたのは“IQホッケー”。作戦をしっかり組立て、頭を使う賢いホッケーを展開すること。それまでのスマイルジャパンの、世界の大女たち(世界レベルの女子アイスホッケー選手の体格は平均で身長180cm前後、日本は170cm未満)を圧倒するスピード、体力だったが、一歩及ばなかった。
今回の世界選手権での4勝1敗の勝因、成長ぶりはスコアシートから
1. GK藤本選手、ディフェンス陣の守りの頑張り
2. 日替わりヒロイン、ポイントゲッターが多く誕生
3. 決める人エース久保英恵選手や、主将大澤ちほ選手も確実に得点
4. 今までなかなか得点できなかったPP(パワープレイ、相手反則で自軍が一人多い状態)で、きっちりポイント
などが見て取れる。
そして、相変わらずのチーム皆の笑顔。スマイルジャパンたる由縁の笑顔全開でチーム状態が良かったことが大きい。平昌五輪出場に向けて、眼前のライバルは今回勝ったスウェーデン。さらに、その上のスイス、ロシア、フィンランドの一角を崩さなければならない。今の勢いで突き進み、スマイルの持ち前の努力とポジティブな姿勢で必ずやってくれると信じたい。ディフェンスの若き要、床亜矢可選手は「全員で戦ってトップディビジョン7位という成績を残せて嬉しいです。来年は上位を目指せるように頑張ります」と語る。
今回、スウェーデン戦で決勝のGWS(ゲーム・ウィニング・ショット=延長戦で決着がつかず、シュート合戦で試合を決着させる方式)でポイントを決めたエース久保英恵選手も「今大会7位ではありましたが、4勝1敗で終わることができ、より世界との差が縮まったと実感出来た大会でした」と、各選手が世界を射程圏内に捕えていることが、次なるステップを大きく踏み出す原動力となる。
※トップ画像/向かって右から世界最優秀ゴールキーパー賞を獲得した藤本那奈選手、ディフェンスの要・床亜矢可選手、エース・久保英恵選手
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