[Japan In-depth 編集部]【すべての子供たちに暖かい家庭を】~4月4日「養子の日」キャンペーン~
Japan In-depth / 2015年4月8日 21時43分
「(子供を迎えて)自分たちも親にしてもらいたいと思った。特別ではなく、普通の家族と一緒です。」週末、多くの人が行き交う街頭で、養子として迎えた1歳2か月の赤ちゃんをベビーカーに乗せた夫婦がマイクを握った。
4月4日を「養子の日」として、出来るだけ多くの子どもたちがあたたかい家庭で暮らせるようになることを目指す、日本財団主催のキャンペーンの一幕だ。
渋谷ヒカリエで開かれたシンポジウムには、およそ250人が集まった。まず壇上に立ったのは、イラン生まれの女優、サヘル・ローズさん。イラン・イラク戦争で家族全員を亡くし、孤児院で過ごした後、養母と出会うまでの体験を赤裸々に語った。サヘルさんは、1人の職員が大勢の子どもの世話をする環境で育った為、養母と一緒に施設を出る際、「手をつなぐ相手がいることに喜びを感じた。」という。両親を亡くし、養母に出会うまで「ずっと誰かの瞳に映りたいと思っていた。」と思いを述べた。
国内には、産みの親が育てることが出来ない「社会的養護」を受けている子どもがおよそ4万人おり、その85%が施設で暮らしている。「特別養子縁組」で養父母の家庭で育つ子どもは全体のわずか1%程だ。アメリカでは毎年およそ5万人、イギリスでは4500人が養子縁組を行っていることを考えると、その数は極端に少ない。
シンポジウムには、養子縁組の推進に取り組む各地の専門家らも出席した。「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を設置している熊本市の慈恵病院の蓮田太二院長は、「ポスト発祥の国のドイツでは、預けられた子が全て家庭で育てられている。」としたうえで、「日本では家庭で育つことの意義、有難さを行政でもご存じない方が多い。」と指摘した。
また、愛知県の元児童相談所職員・矢満田篤二氏は、「育てられない」という相談を妊娠期から受け付け、児童相談所が養子として迎えたい家庭を斡旋する取り組みを続けてきたことを報告した。この取り組みは「愛知方式」と呼ばれ、国内では先進的なものだ。
そして、会場に集まった人々の大きな注目を集めたのが、実際に養子を迎えた2組の夫婦の体験談だ。仙台から来た夫婦は、妊娠が難しいと分かったことで民間団体に登録し、2人の養子を迎えた。現在4歳の男の子と2歳の女の子。男の子は会場を元気に走り回り、女の子は夫婦に抱かれ愛くるしい表情を見せた。
夫婦が語ったのは、2人を迎えた時の心境。団体から「産まれた」との連絡を受けた時、真っ先に頭に浮かんだのは、何らかの事情で我が子と離れる実の親のことだった。夫は初めて抱いた時、「託された。」と感じたという。妻も「どんな気持ちで手放したのか。」と思うと初めてオムツ替えをする際、「手が震えた。」と話した。
また1歳2か月の子を抱いた東京在住の夫婦は、子どもに養子縁組の事実をどう伝えるかについて語った。夫婦は産みの母に抱かれた写真を、既に子どものアルバムの中に入れており、「母親が2人いる、と自然に伝えたい」と話した。
国内で「特別養子縁組」を進めるには、法整備や支援体制の確立などまだまだ課題は多い。しかし今日も日本のどこかで実の親の養育が受けられず、施設に入所する子どもがいる。その子にも、きっとあたたかい家庭で育つ権利がある。養子縁組に関する議論の広がりは、急務だと感じる。
※特別養子縁組とは
普通養子縁組は家の存続や相続などの目的で行われてきたが、特別養子縁組は保護を必要とする子どもの福祉が目的。原則として6歳未満の子どもについて、一定の要件の下、家庭裁判所の審判により成立する。産みの親の親権は停止し、戸籍上の表記も実子と同じになる。
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