[相川俊英]【候補者不足で再選挙の恐れ?】~統一地方選後半戦、町村議会選告示~
Japan In-depth / 2015年4月21日 7時0分
候補者不在により住民が民意を示せぬ地方自治の歪みが拡大している。19日に告示された全国89市の市長選で約3割が無投票となり、本来は無投票になりにくい市議選でも295市のうち15市(複数選挙区の市を含む)が選挙なしとなった。代議制民主主義を消失させかねない由々しき事態である。
だが、より深刻な状況に直面しているのが、21日に告示される町村だ。実は、小規模な町村の自治体関係者が恐れていることがある。町村議選で議員定数を上回る立候補者が現れない事態である。この場合、通常は欠員を出したまま無投票となるが、公職選挙法は例外規定をもうけており、立候補者の不足数が議員定数の6分の1を超えると再選挙することになっている。
これに該当した場合、その自治体は議員定数に満たない分の選挙を改めて実施しなければならないのである。つまり、「定数を上回る候補者がいないので無投票で終わり」とはできないのである。不足分の議席に座る人が確定しなければ、議会は開会できず、事実上、議会の機能停止が続くことになる。行政関係者が何としても避けたい異常事態である。
実際に再選挙となった事例がある。2007年4月の統一地方選で奈良県上北山村の村議選でのことだ。人口約750人の上北山村の議員定数は7人(いずれも当時)。ところが、立候補者は5人にとどまり、欠員2となった。定数の6分の1を超し、村は再選挙で大騒ぎとなった。
候補者探しに四苦八苦することを余儀なくされたのである。上北山村の人口はその後、約590人に減少し、議員定数は21日告示の村議選から6人に削減された(ちなみに議員定数の最小は沖縄県北大東村の5人)。
議員選の再選挙を回避する目的で、選挙直前に議員定数を駆け込み削減する自治体もある。例えば、群馬県神流町だ。2005年2月に実施された町議選での議員定数は12人。立候補者が13人現れ、どうにか選挙となった。その後(2009年)定数は10に削減されたが、議員の高齢化が進行し、2013年に町は重大な危機に直面した。引退表明が相次ぎ、再選挙の悪夢が現実化しそうになったのだ。事態を憂慮した議会側は大慌てで定数削減に動き出し、10を8に減らすことにした。議案を採決したのは、議員選告示日のわずか3週間前だった。数年前に引退した高齢の元議員らを拝み倒して何とか8人の候補者をかき集め、無事?無投票にこぎ着けたのだった。
議員報酬の高い都市部の自治体と異なり、小規模な町村の議員報酬は月額20万円ほど。議会が平日昼間に開会されるため、勤めながらの兼業は事実上、不可能だ。かといって専業でやれるほどの報酬ではなく、結局、年金生活者や自営業などの限られた人たちしか、名乗りをあげられなくなっている。議員の成り手不足の要因のひとつである。
こうした地方議会の閉塞状況を打破するには、議会の開会を土日夜間に限定して人材の供給源を拡大したり、逆に、小規模自治体の場合は議会をなくして「住民総会」に変えるといった大胆な策が必要ではないか。21日告示の町村議員選で、再選挙となる自治体がはたして現れるだろうか。
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