[古森義久]【謝罪しなかった岸信介首相】~1957年米議会での演説、万雷の拍手~
Japan In-depth / 2015年4月27日 7時0分
安倍晋三首相がいよいよアメリカを公式訪問する。その訪米ではオバマ大統領との首脳会談に加えてアメリカ議会上下両院合同会議での演説がハイライトとなるだろう。その演説内容については中韓両国とアメリカの一部から日本の過去の「侵略」や「植民地支配」への「お詫び(謝罪)」を具体的に述べることへの要求が伝えられる。
だが戦後から遠くない1957年の岸信介首相のアメリカ議会での演説では過去の戦争へのその種の言及はまったくなかったという事実の意味は大きいといえよう。日米両国の間ではその時点ですでに戦争についてのやりとりは清算されていたようだからだ。
日本の首相のアメリカ上下両院合同会議での演説は初めてとなる。しかし日本の首相が上下両院のうちのひとつで演説したことはすでに3回ある。1954年の吉田茂首相の上院での演説、1957年の岸信介首相、1961年の池田勇人首相のいずれも下院での演説である。
そのうちの岸氏の演説はとくに注視に値する。日米間の激しい戦争が終わってまだ12年しか過ぎていない時点だったのにもかかわらず、戦前、戦中という過去への言葉はまったくなかったからだ。岸首相の演説の主要部分は以下のようだった。
「日本は、真に民主主義に立脚した強固な政治の基礎を築くため、誇りと固い決意を持って邁進(まいしん)している。個人の自由と尊厳を基礎 とする民主主義の高遠な原則を信奉し、国を挙げてこの使命達成に全力を傾倒している」
「われわれの自由世界との関係では米国との提携こそ最も重要である。米国から受けてきた援助に感謝している。世界各地で緊張が存続する現状では、日米両国の友好関係、相互の尊敬と信頼、さらに両国間の協力のきずなは、いよいよ強固でなければならない」
「国際共産主義はアジア人の熱烈な民族主義を利用し、貧困と欠乏を克服しようとするアジア人の焦慮に訴えて、アジアを席巻しようと企図している。われわれは共産主義者の説くところは間違っており、民主主義によってこそ人類の繁栄と福祉が得られると固く信ずる」
「アジアの最も進歩した工業国である日本は、共産主義者の言う近道ではなく、経済的、社会的発展を達成しうるという事実を、すでに示してきた。つまり、自由経済こそ、人間の尊厳を立派に保持しながら、人類の幸福と福祉に貢献することを立証してきたのだ。日本は、自由世界の忠実な一員として、特に自由世界が国際共産主義の挑戦を受けているアジアで有効にして建設的な役割を果たし得ると固く信じる」
「私は米国大統領の招待に応じ、日米両国がともに関心を持ち、利害を有する広範な諸問題について、米国の最高首脳部と、率直な意見の交換を行うため、今回、米国を訪れた。今回の会談を通じ、強固にして恒久的な日米両国間のパートナーシップが生まれ、そこから日米関係の新時代の扉が開かれるもの、と信じる」
岸首相の演説は上記がほぼすべての短い内容だったが、途中、議員たちの大きな拍手で6回も中断され、最後の拍手は60秒も続いたのだった。そしてその内容は過去の日米間の戦争にはまったく触れていなかったのである。
であるのに、その岸演説から58年後のいまになって、その「過去」が「歴史認識」というような表現で主張されるという事実は、アメリカでの日本にからむ歴史問題というのはアメリカ自体ではなく、そこを舞台にした中国系や韓国系の政治勢力によって植えつけられ、煽られてきたことを改めて示すのではなかろうか。
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