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[西村健]【芸術文化都市の在り方に疑問 3】 ~東京都長期ビジョンを読み解く!その21~

Japan In-depth / 2015年5月2日 7時0分

[西村健]【芸術文化都市の在り方に疑問 3】 ~東京都長期ビジョンを読み解く!その21~

「あなたは、今、東京の何を知っていますか?」これは東京文化ビジョンに寄稿した秋元康氏の言葉だ。秋元氏はさらに語る。「東京生まれ、東京育ちですが、東京のすべてを知っているわけではありません。でも、“僕の知っている東京”があります」と。

東京文化ビジョンに書かれたこの文章を見て、心がざわついた。秋元氏の言うように、多くの人が東京についての自分の興味・関心・経験・学習の周囲についてしか知らない。東京に長年住んでいても、様々なアンテナを張って、情報に敏感でいても、あっという間に東京は変化してしまう。

あの人が好きだった店、そこで売られているお気に入りの商品、歓喜したあのレストラン、愛を語り合った隠れ家的なバー、恐る恐る手を握った映画館、愛を誓った丘、みじめ思い出に溢れたあの公園、泣きながら歩いた裏通りの雑踏、絶望した心に沁みた朝焼けのまぶしさ、自分を支えてくれた仲間と過ごしたあの校舎、そう、街の風景と思い出。

こうしたものは数年後に行ってみると見る影もなく消えていることもある。それに対してノスタルジックな切なさやはかなさを感じ、「自分の知っている東京」を味わう時間すら東京は許してくれない。そうした中、東京文化ビジョンには、時の流れに揺らがない郷土芸能をはじめとする伝統文化資源が紹介されている。

25ページには、東京市部に存在する郷土芸能が一覧として掲載されている。

武蔵府中のくらやみ祭など地元民にとって有名なものや多くの自治体で囃子、獅子舞などが紹介されている。特徴的なものを筆者の独断でまとめると表のようになる。(トップ画像の表、参照)

こうした伝統文化が存在することに日本、日本人としてよかったと感じる。しかし、どれだけの人がこうした歴史文化を知っていて、かつその意味を理解して、さらに愛着を感じているのだろうか。

私は過去10年近くコンサルタントとして行政改革の仕事をすることが多かった。自治体の担当者からは「担い手が足りない」「住民の理解が課題」という声を度々聞いてきた。個人的感情を抑えて会議をリードした結果、芸術文化についての事業費が削減される様を何度目の当たりにしてきたことか(芸術文化は住民の生活に影響を直接的に与えないと思われ、たいてい行革のターゲットにされる)。

芸術文化にはどういった意味があるのか、歴史的・文化的・思想的文脈にどう位置づけられるのか、どういった時代背景の中で作られたのか、当時の人々はどう考えていたのか、どういった重要性があるのか・・・。

こうしたことを聞く側の前提知識の有無に合わせて、専門家がその価値をわかりやすく「通訳」さえしてくれればもっと理解が深まるのにという問題意識を持っている。文化戦略1、2、3を読んでいると「長い歴史の中で培ってきた伝統文化の神髄」という言葉が目についた。「神髄」とはそのものの本質。その道の奥義と定義される。

東京都にはこれだけの芸術文化資源があるが、都民が触れる機会も少ない。その神髄を都民が理解できるように積極的に取り組んでもらいたいものだ。

(本記事に貼られているリンクを開くには、http://japan-indepth.jp でお読みください)

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