[久保田弘信]【変貌遂げるアジア最貧国バングラデシュ】~経済発展で格差拡大も~
Japan In-depth / 2015年5月3日 21時0分
かつて、アジア最貧国と言われたバングラデシュだが、この数年飛躍的な経済成長を遂げている。首都ダッカを訪れれば、大型ショッピングモールがあり、街中にはリキシャー(人力車)に混じって高級車が走っていてアジア最貧国とはかけ離れた風景を目にするだろう。しかし、一歩奥に足を踏み入れると首都ダッカにも多くのスラムが存在する事に気づく事になる。
ダッカ市内に日本のODAで建てられたパンパシフィック・ショナルガオン・ホテルがある。ショナルガオン・ホテルからほんの数分歩けば線路に行き当たるが、その線路沿いにスラム街が広がっている。通常、スラム街は隔離されていて、その国に住む一般の人がスラムに足を踏み入れる事は殆どない。
しかし、この線路沿いのスラムはすぐ高級ホテルやカウランバザールに隣接していて、近道をする為に多くの人が線路沿いを歩く不思議なスラム街となっている。
スラムの人が一般の人を襲う事もなく、一般の人がスラムに住む人達を蔑む様子もみられない。線路沿いにはいくつもの露天商が並び、スラム外の人がお買い物をするシーンも見られる。世界でもっとも安全なスラム街ではないかと思う程治安が良い。
とはいえ、そこはスラム街。住居環境は最悪で、冬は寒さ、夏は暑さとの闘いが待っている。衛生環境が悪く、マラリアやデング熱も度々流行している。
そんな最悪とも思える環境下で暮らしているスラムの人達だが、悲観した様子がなく、みんな明るいのに驚かされる。
裸足で寒さを凌ぐ為にビニールを燃やして暖をとる少女、僕のカメラに最高の笑顔を見せてくれた。線路沿いでゴミを集めていた子供達、この子達も最高の笑顔を見せてくれた。スラム街に高級カメラを持って取材に入る事は結構な緊張感が伴うものだが、バングラデシュのスラム取材には緊張感がない。
「写真を撮ってくれ」と近づいて来る子供は多いが、「お金や物を恵んでくれ」と言ってくる子供はいない。それどころか、お家に招待され、「夕ご飯をたべていきなさいよ」と誘われる事も多々ある。
バングラデシュには「ダワット」という言葉がある。直訳すれば「ご招待」。バングラデシュの人達は少し仲良くなるとすぐに食事に招待してくれる。その文化はスラム街にあっても変わる事がない。
そんな穏やかなバングラデシュが急激な経済発展によって変わり始めている。
貧富の差は今まで以上に拡大し、政治の汚職は止まる事を知らない。人々の不満が爆発し、ホルタルというデモが激化しつつある。数年前までホルタルは単なるデモ行進だったが、近年では投石だけでなく銃の発砲による死者まで出る過激なものとなりつつある。
経済発展を見越して、日本の企業も進出しているバングラデシュ。一部の人だけでなく、最下層の人達も恩恵を受けられる経済発展に寄与して欲しいと思う。
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