【NATO加盟で「西側」目指した「ジョージア」元大統領】~日本政府も支援を~
Japan In-depth / 2015年5月6日 11時0分
「ロシアが紛争解決に効果を上げないなら、独立国家共同体(CIS)から離脱して、NATO、EU加盟を目指す」この発言を産経新聞で報じると、ハチの巣をつついたような騒ぎになった。シェワルナゼ氏がNATO加盟の意向を表明したのは初めてだったからだ。ロシア政府から「誤報ではないか」と抗議があり、取材の録音テープ提出を求められた。ロシア外務省高官は「テープを出さなければ、査証(ビザ)更新は困難になる」と迫った。
シェワルナゼ氏が公式にNATO加盟を表明したのはこの年の11月だった。インタファックス通信は次のように伝えている。「シェワルナゼ・グルジア大統領は記者会見し、同国のNATO加盟を『長期的な戦略』と位置づけ、次期大統領選で再選されれば二○○五年にもNATO加盟を申請すると表明した。バルト三国を除くCIS加盟国の元首がNATO加盟方針を公に表明するのは異例で、NATO拡大に反対するロシアの反発を招く可能性が強い。グルジアは四月にCIS集団安全保障条約を脱退するなどロシア離れを強めている」。
シェワルナゼ氏が筆者に親米反露路線への転換を吐露したのは、クレムリンの権力構造とその根底にあるロシア第一主義を熟知するがゆえに、「帝国主義支配の復活を望むロシアから離れて欧米に接近することが祖国再興の近道」と考えたからだろう。現実主義的なバランス感覚だった。
残念ながらシェワルナゼ氏は、経済の低迷と汚職対策が遅れ、04年に「バラ革命」で失脚したが、後任のミハイル・サーカシビリ大統領が親欧米路線を拡大させ、NATOとEU(欧州連合)加盟を最優先課題にあげて奔走。2008年の紛争を機に09年8月、CISを脱退したが、NATO加盟はウクライナと共に先送りされている。
「ジョージア」にとってNATO加盟なくして、ロシアの圧力に対する安全確保の道はない。またEU加盟なくして経済の発展、国民生活の向上はあり得ない。それは隣国ウクライナ情勢からも明らかだ。NATOに加盟していればグルジア紛争もウクライナ危機も防げたかもしれない。EUや米国と共に日本も「ジョージア」の悲願実現を支援するべきではないだろうか。
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