[為末大学]【直観は正しいのか?】~経験の一部しか知覚していない私たち~
Japan In-depth / 2015年5月8日 7時0分
直感は正しいのか、間違えているのか。人間はさほど完璧ではないというのが行動経済学の原点らしいのだけれど、一方でroboticsの世界の話を聞いていると達人の直感を再現するのが如何に難しいかと語られる。
カクテルパーティー効果というものがある。パーティーの最中目の前の人と会話をしている時、周辺の会話は聞こえてこない。ところが、後ろの人間が自分の名前をだし噂話を始めた途端、後ろの会話が聞こえてくる。ここで浮かび上がる問いは、では会話は聞こえていたのか聞こえていなかったのか。聞こえていなかったのなら、なぜ自分の名前は聞こえたのか。聞こえていたのならなぜそれまで頭に入ってこなかったのか。意識的に聞こえているという領域はあまりにも狭い。
脳梁を切った患者に対し、右視野(左脳)と左視野(右脳)に言葉を見せて、対象となるカードを引かせる実験がある。言語をつかさどる左脳が反応するために、右視野にシャベルと出せばシャベルが書かれたカードをとる。ところが左視野にシャベルと出しても患者はそれがシャベルという言葉だとわからない。中には言葉自体が見えないという患者もいる。ところが当てずっぽうでいいからカードを取ってくれと言われたら、えいやと確か7割程度の人がシャベルが書かれたカードをとる。
意識的に聞こえている、見えているということと、意識されないけれども見えていて聞こえているということ。見えた、聞こえたと意識するものだけが本当に見えているものだろうか。もし、これまでの人生で意識されないけれども経験してきた、無意識の経験が積み重なったとして、その無意識の経験からくる経験則的な答えを私たちはどう認識するのだろうか。私たちは私たちが経験してきたことの一部しか知覚していないが、無意識の領域も含めれば膨大な経験を蓄積している。
私が私と認識している領域よりも私の範囲はもっと深遠な広がりを持っている。その私も知らない深遠な私の領域から出てくる経験則的な答えを直感と呼ぶのだと私は考える。競技をやっていて、まず先に体が実現してしまうという事がある。私はおしゃべりだから、あとでなんだかんだとそのできてしまった事に理由をつけて、最もらしく説明する。ある専門性が習熟されきった世界では論理は直感をそれっぽく伝えるために存在するのではないか。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
大谷選手はフィジカルだけでなく、頭の中まで超人的なのか?【脳科学者が解説】
オールアバウト / 2024年10月24日 20時45分
-
「ここではきものをぬいでください」どう読む? 目の見えない精神科医が「見えていても見えないことがある」と説く理由
集英社オンライン / 2024年10月22日 8時0分
-
「大切な人の気持ちがわからないなら声に耳を澄ませて」目の見えない精神科医が声色で相手を見抜ける理由
集英社オンライン / 2024年10月22日 8時0分
-
運が悪い人ほど口にしている「3つのNGな言葉」
PHPオンライン衆知 / 2024年10月21日 12時0分
-
科学でひも解く「人生が好転する」意識の持ち方
PHPオンライン衆知 / 2024年10月8日 17時0分
ランキング
-
1男性が首から出血 近くにカマ 病院搬送も死亡確認 滋賀・高島市のホームセンター
ABCニュース / 2024年11月4日 19時46分
-
2H3・4号機、打ち上げ成功=防衛通信衛星、予定軌道に―3機連続「大きな一歩」・JAXA
時事通信 / 2024年11月4日 20時46分
-
3石破首相、バイデン氏・習近平氏と初の対面会談の意向明かす…「首班指名いただければ」
読売新聞 / 2024年11月4日 17時39分
-
4「H3」の打ち上げ3回連続で成功…防衛省の通信衛星「きらめき3号」搭載の4号機
読売新聞 / 2024年11月4日 20時56分
-
5国民・玉木雄一郎氏「年収の壁撤廃」潰しに財務省が暗躍か 自民は及び腰に!?
東スポWEB / 2024年11月2日 6時1分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください