[水野ゆうき]【「公職選挙法」を守る人が落選する矛盾】~統一地方選2015総括~
Japan In-depth / 2015年5月9日 11時0分
実際に選挙に携わった人間は「なぜこれがいけないの?」「なぜこれは良いの?」という疑問を必ず持つ。選挙に立候補する候補者も支える運動員もまた有権者も、公職選挙法によってさまざまな活動や表現方法が制限される。そしてこの公選法の不思議な点は、地方選挙であっても政党所属が有利に作られている上に、公選法を全て守っている候補者があまりにも少ないということだ。今回の統一地方選に焦点を当てて見てみる。
例えば、政党が党の政策等を流す車が存在するが、このいわゆる「政党カー」が選挙が近くなると突然出没して候補者の名前を連呼する。もちろんこの行為はNGだ。簡単に言うと1候補者につき1台の選挙カーしか名前を連呼することが許されていない。皆さん、選挙時を思い出して欲しい。1候補者につき複数台の車が候補者の名前を連呼していなかったか?
更に、2か所以上で拡声器を使用してはならなかったり、マイクの使用も午前8時~午後8時までという規定があったりと、数えきれないほどの制限がある。まず、候補者となる人や支持者はこの勉強をすることから始めなくてはならない。
無所属で新人の候補者はイチから公選法を勉強するわけだが、実は知らず知らずの間に違反してしまっていることもよくある話しだ。そういう場合は選挙管理委員会から連絡があり教えてくれる(他陣営や有権者が選管に違反連絡をしている場合が多い)。選挙を通して公選法を知っていくことも多い候補者だが、地域や解釈によって実に様々であり、厳しいところもあれば緩いところがあるのも現実だ。今後の日本の政界において重要なことは時代に即した公選法に変えていくことはもちろんであるが、有権者が公選法を知ることも大切だ。
私は無所属でマイク1本と街宣車1台、ボランティアスタッフで選挙戦を行ったわけだが、有権者から「〇〇候補は毎日、街宣車でうちの方に来てくれるのに、何故来てくれないの?」と言われた。横長の我孫子市内すべての地区を車で毎日行くことは1台では現実的に無理だ。しかも私がマイクを使っていたら、他の箇所ではマイクを使ってはいけないわけで、もしそんなに緻密に毎日候補者の名前が聞こえていたらそれはそれでおかしいということに気付いてもらいたい。
更に午前8時前、午後8時以降に駅立っていたら「選挙違反だ!」と怒鳴られた。午後8時~午前8時までは拡声器の使用が禁止をされているだけで、その時間外に肉声で駅頭をすることは一切問題ない。要は正確に公選法が有権者に伝わっていないのだ。しかも意外に堂々と選挙違反をしている陣営が多く、更に気付きにくくさせている。
どんなに時代遅れの公選法であっても法律に変わりはない。選挙を重ねると、麻痺して「これくらいなら違反しても大丈夫だろう」と考える候補者も少なくないのが現実だ。
もちろん国政選挙となれば違反や妨害等のレベルも増す。愚直に公選法を守る新人候補者が落選してしまった現場を見てきた今回の統一地方選。公選法ひとつを取ってみても、作る側が守らない法をいくら拵えたところで、政界の新陳代謝はまだまだ先の話しだ。
ただ、有権者が公選法を知ることで監視の目が増え、候補者に緊迫感を与えることができる。むしろそれができるのは有権者しかいない。ひいては、有権者が政治を変えることに繋がり、やはり社会を変えていく主役は政治家ではなく皆さんなのだ。
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