[遠藤功治]【“意思ある投資”にシフト、一気に攻めに転ず】~大手自動車会社決算と今後の課題 トヨタ 3~
Japan In-depth / 2015年6月2日 7時0分
トヨタはこの11月に4世代目のプリウスを投入します。TNGA(Toyota New Global Architecture)と呼ばれる、プラットフォーム統合を目指したその第1弾です。2020年までにはトヨタ車の約半数が、この開発生産方式に移行します。FCVのミライも発売され、これも2020年の東京オリンピックに向けて、燃料電池関連のインフラの整備を狙っています。オリンピックのグローバルスポンサー契約もこれがその理由の一つ、2020年には自動走行機能を装備したミライなどのFCVに加えて、i-Road やWingletなど、交通インフラの構築まで狙っている、というものです。
さすがにこのような方向性の中で、トヨタでさえも全ての領域でリーダーの座を維持するのは至難の業であろうということでしょう。一方で、マツダはトヨタの真逆、収益低迷時に起死回生を掛けて全てのリソースをSKYACTIVに集中投下、これを成功させた訳です。マツダは現在、2018年頃の投入を目指して、HCCIという機能を入れたSKYACTIV-2を開発中。これが出来れば、欧州や米国で導入が進むであろう大幅な環境規制値もクリアできるということです。マツダはトヨタからFCVやHVの提供を受けるということでしょうが、本当に出資関係を伴わずに進むのか注目でしょう。
話しは長くなりましたが、最後にトヨタが今後発行する種類株について触れたいと思います。トヨタは来る6月の定時株主総会で、AA型種類株約5,000億円の発行につき、総会で提案をする予定です。この種類株とは、現在の普通株とは違い、元本保証の転換社債のような性格で、初年度の配当利回りは0.5%なのですが、その後毎年0.5%ずつ上昇して5年目には2.5%になる。最初の5年間は譲渡不可ですが、5年目以降からは普通株に転換出来るというもの。
発行価格は普通株より2割ほど高いということですから、1万円強ということになります。発行後、ほぼ同数の株式を市場から自己株買いで購入、希薄化を最小限に抑えるとのことです。5年間の譲渡制限があるため、機関投資家や外人投資家目的ではなく、長期保有目的の個人株主の比率を高めたい、とのトヨタの意向などでしょうが、これにISSが異を唱えました。曰く、安定株主の増加は以前の企業同士の持ち合いと同じで、投資家の声が経営に反映されにくくなると。現在の株主構成から言って、総会で否決される可能性は非常に低いと言わざるを得ませんが、小糸を巡る一件以来、トヨタ経営陣と一部投資家の議論の場が出来るのは、大変好ましいと言えます。株主総会は6月16日、大注目です。
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